ウクライナの日本法人に敬意を表して

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ウクライナの日本法人一覧

帝国データバンクによるとウクライナに進出している企業は57社です。

ウクライナで事業を継続している日本企業の決断と行動には、勇気と献身が感じられます。戦時下という非常に困難で危険な状況の中で、従業員の安全を確保しつつ事業を継続することは、並大抵のことではありません。これらの企業は、ウクライナの経済や雇用を支えるために重要な役割を果たしていると言えます。また、現地の人々に必要な製品やサービスを提供し続けることは、人道的な観点からも意義のあることだと考えられます。

一方で、企業には従業員の安全を最優先する責任もあります。戦況によっては、事業の継続が困難になる場合もあるでしょう。各企業は、現地の状況を注視しつつ、従業員の安全と事業継続のバランスを取る難しい判断を迫られていると思われます。ウクライナで事業を継続している日本企業の決定は、状況に応じて変化せざるを得ないものの、平和な日常を望むウクライナの人々を支援する強い意志の表れでもあると言えるでしょう。これらの企業の勇気と献身に敬意を表するとともに、一日も早い平和の実現を願わずにはいられません。

そして、ウクライナで事業を継続している日本企業にとって、戦後はさらなる事業拡大の機会になる可能性が高いと考えられます。第一に、戦時中も現地に留まり事業を継続したことで、ウクライナの人々や政府から信頼と好意を得られるでしょう。このことは、戦後の事業環境において大きなアドバンテージとなり得ます。第二に、戦後のウクライナでは、インフラの再建や経済の再構築が急務となります。日本企業の技術力や投資は、こうした分野で大いに役立つはずです。日本政府もODAなどを通じてウクライナ支援に乗り出すと予想され、官民連携での事業展開が期待できます。第三に、ウクライナはEUへの加盟を目指しており、将来的にはEU市場へのアクセスも容易になるかもしれません。日本企業にとって、ウクライナを拠点とした事業展開は、欧州市場への参入の足掛かりになる可能性があります。

ただし、戦後のウクライナがどのような政治・経済体制になるのか、ロシアとの関係がどう変化するのかなど、不確定要素も多いのが現状です。日本企業は、こうしたリスクを慎重に見極めつつ、ウクライナでのビジネス機会を探っていく必要があるでしょう。いずれにせよ、平和と安定したビジネス環境の実現が何よりも重要です。日本企業のウクライナでの事業が、同国の復興と発展に寄与し、ひいては世界平和に貢献することを心から願っています。

JT

日本たばこ産業(JT)はウクライナに1990年代後半から進出しています。2000年にウクライナ中部のクレメンチュクにあるタバコ製造工場を買収し、そこをタバコ生産の拠点としています。ウクライナでの事業規模も大きく、2020年の国内の納税者ランキングで6位に入るほど。現在の従業員数は約900人で、メインオフィスはキーウに置いています。

ソニー・ウクライナは、キーウにオフィスを構えています。従業員数は20〜30人ほど。ウクライナではソニーのTVやオーディオ機器、プレイステーションなどを販売しています。以前、プレイステーションのCM撮影がキーウで行われたこともありました。

複合機メーカーのコニカミノルタ・ウクライナはキーウにメインオフィスを置くほか、ハルキウ、オデーサ、ザポリッジャ、ドニプロ、リウネ、リヴィウ、イヴァノ・フランキウシクにも拠点を置いています。複合機のほかにも、オフィス向けのITソリューションを提供しています。

自動車用ワイヤーハーネスを製造するフジクラは、ウクライナに2013年に進出。西部のリヴィウに工場を起き、ワイヤーハーネスの製造を行っており、現地で1200人以上を雇用しています。戦時中でも工場は引き続き稼働しており、製造されたワイヤーハーネスはヨーロッパに輸出され、現地の自動車組立工場で使用されています。

ウクライナに現地法人を2006年に設立。ウクライナ西部のテルノーピリに自動車用ワイヤーハーネスの製造工場を建設。その後も、ウクライナ西部の各都市(テルノーピリ、チェルニウツィ、フメリニツキー)に新工場を建設。従業員数は約6000人。2022年2月の戦争開始後も、工場での製造はすぐに再開しましたが、報道によるとウクライナで製造する自動車部品をルーマニアなどに今後移管するとのこと。

同じく自動車用ワイヤーハーネスを製造する矢崎総業は、2003年にウクライナ西部のハンガリーとザカルパッチャ州に工場を建設。従業員は1300人で、戦時下でも稼働を続けている。

日立が2021年に約1兆円で買収したエンジニアリング企業のGlobalLogicがウクライナに拠点を置いています。首都キーウのほか、ハルキウ、リヴィウ、ミコライウなど、ウクライナ各地にエンジニアリング拠点を置き、約6500人を雇用。戦争開始前後に、一部エンジニアはポーランドなどの欧州各国に移り住んだとのこと。

日本の大手商社の双日は、ウクライナでスバルの総輸入代理店業務を行っています。スバルの車の販売を2006年ごろより本格展開。その他には、いすゞ自動車と共同でウクライナにトラック・バスの販売会社を設立した実績もあります。2023年秋にキーウで行われたウクライナ・日本ビジネスフォーラムに双日が参加したほか、2024年2月の日・ウクライナ経済復興推進会議では、PicoCELA社と共同でウクライナの大手携帯通信会社キーウスター(Kyivstar)と、「ウクライナにおけるメッシュWi-Fiを利用したインターネット環境の迅速な構築のためのワイヤレスマルチホップ技術の開発に関する覚書」を締結しています。

日本の大手医薬品メーカーである武田薬品工業は、2008年にキーウに子会社を設立しています。従業員数は約300人。

日本の精密科学・医薬品メーカーの富士フィルムは、2011年にキーウに子会社を設立しています。カメラ・レンズの販売がメインで、従業員数はごく少数と思われます。

製造業に特化した人材派遣を行う株式会社アウトソーシングは、2018年にオランダのOTTOグループを買収。OTTOグループは現在、メインオフィスであるリヴィウのほか、ジトーミル、ザポリッジャ、クリヴィー・リウ、クロピウニツキー、テルノーピリ、ハルキウなどのウクライナ各都市に採用拠点を置いており、ウクライナ人材を国内外に提供しています。

電動工具メーカーのマキタは、キーウのほか、ウクライナ各地に販売拠点を構えています。従業員数は約50人。パートナー企業を通じて、電動工具を販売しており、マキタのブランドは多くのウクライナ人に知れ渡っています。

現在の法人のパナソニック・ウクライナは、2011年にキーウに登記。カメラ、オーディオ機器、美容家電、乾電池などをウクライナで販売しています。

工業計器、計測器メーカーである横河電機は、2012年にキーウに現地法人を設立。しかしながらこの子会社は横河電機CIS(ロシア)が99%の株式をもっており、今後のウクライナでのビジネス展開に影響がでそうです。

カメラ、複合機メーカーであるキャノンは2012年にキーウに子会社を設立。

大手商社の伊藤忠は、ウクライナではスズキ、マツダの輸入総代理店業務がビジネスの中心です。キーウには駐在員事務所を置いています。進出時期は不明ですが、ウクライナでは長年にわたってビジネス活動を行っています。

大手商社の三菱商事は、キーウに子会社を置いています。三菱自動車の輸入総代理店業務を主に行っています。

日本の大手商社の住友商事はウクライナに自身の100%子会社であるトヨタ・ウクライナを2003年に設立。トヨタの総輸入代理店としてトヨタ車の輸入と販売を行っています。トヨタの車はウクライナの2023年の新車販売台数でメーカー別の第1位を獲得しています。また、住友商事は、ウクライナにて農薬、種子、肥料などの農業資材を販売するスペクター社(Spectr-Agro LLC、Spectr-Agrotechnika)の株式の51%を取得し、ウクライナでの農業資材直販事業も行っています。Spectr-Agro社はキーウ州のオブーヒウ市に工場を置いています。また、2024年2月の日・ウクライナ経済復興推進会議では、住友商事はウクライナ最大のガス・石油会社のナフタガスと、「Naftogaz Teploが管理するCHP(熱電併給)施設の近代化に向けた情報収集・要望確認・復興計画事業に関する覚書」を締結しています。

住友商事の100%子会社である「スミテック・ウクライナ(Sumitek Ukraine)」は、キーウに法人住所を置いています。コマツとトヨタL&Fのフォークリフトをウクライナに輸入・販売しています。

日本の大手商社の丸紅はウクライナで20年以上の事業実績があります。オフィスをキーウにおいており、化学品、農業資材、食料の輸出入のほか、ブリヂストンのタイヤや、Daiwaの釣具などをウクライナに輸入しています。2023年秋には、ウクライナ日本ビジネスフォーラムに参加するため、キーウを代表者が訪問しました。

丸紅と日立建機の合弁会社。丸紅が株の80%を日立建機が20%の株を保有。ウクライナにおける日立建機製鉱山機械の販売及びプロサポ事業がメイン。従業員数は10〜50名ほど。ウクライナ法人は2021年に設立され、ウクライナ中部のドニプロ市に拠点を置いています。

日立エナジーは、スイス・チューリッヒに本社を置く日立グループの企業。ウクライナ西部の変電所やヘルソン州の風力発電所向けにサーキットブレーカー、断路器、避雷器などを含む空気絶縁開閉装置 (AIS) を提供しています。

大手通信事業者の楽天は、無料通信アプリの楽天Viberがウクライナで大人気。Viberは、ほとんどのウクライナ人のスマホにインストールされており、友達とのチャットや電話のほか、企業や政府機関からの通知の受け取りにも活用されるなど、社会のコミュニケーション基盤を担っています。Viberのオフィスをキーウやオデーサにおいており、従業員数は約30人。楽天グループ傘下の楽天シンフォニーは2024年2月26日、ウクライナの大手通信事業者であるKyivstar(キーウスター)と提携を発表。Kyivstarがウクライナで展開するネットワークに、楽天シンフォニーが持つOpen RANのテクノロジーを導入するとのこと。またそれに先立つ2024年1月には新たなオフィスをキーウに開設しています。

ID&E ホールディングス株式会社の傘下で、建築コンサルの日本工営は、2023年12月にキーウに事務所を開設。リヴィウ市とも包括連携協定を締結。JICA、経済産業省、外務省などからウクライナ復旧・復興関連業務を受注し、サービスを実施しています。

家庭用及び業務用洗浄剤・消毒剤・うがい薬等の衛生用品を製造するサラヤは、2016年にウクライナに現地法人を設立。インターネットや卸売を通じて、同社の製品を販売しています。

これらとは別に、2024年2月に行われたウクライナ復興支援会議を機に、勇気ある日本企業がウクライナ復興支援に名乗りを挙げています。利益よりも支援と未来を追求した英断であり、大変期待されます。農業分野においても、ウクライナを支援しようと試みる勇気ある日本企業が5社あります。

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