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ウクライナが戦時下といっても、ウクライナは生き残るために海外からの投資を必要としています。ここでは、ロシアによる全面侵攻後に、ウクライナに対し新たな投資を行なった外国企業を取り上げます。
世界的なタバコ製造会社であるアメリカのフィリップモリス(Philip Morris)は、1994年よりウクライナにて事業を行っており、これまでに7億ドルを同国に投資しています。同国の納税者ランキングでもTOP10によく入っており、2022年には253億フリヴニャ(約1000億円)の税金を支払っています。
フィリップモリスは、ウクライナ東部のハルキウ州に自社工場を持っているが、戦争の影響により同工場は操業を停止。しかしながら2023年6月に、ウクライナ西部のリヴィウ州に新たな生産設備の立ち上げのために3000万ドル以上を投資することを発表。新たに250名以上の雇用を創出する予定で、生産開始は2024年第1四半期を予定しているとのこと。
世界的医療メーカーであるドイツのバイエル(Bayer)社は、実はバイエルは農業分野にも力を入れています。すでにウクライナのジトーミル州にトウモロコシ種子生産のための自社工場を抱えていました。2023年4月にバイエルは、このジトーミル州の工場の増強のために新たに6000万ユーロを出資することを表明。生産された種子はウクライナ国内のトウモロコシ栽培向けのほか、EU諸国へも輸出される計画とのこと。
バイエルはウクライナでは1992年より事業を行っています。ウクライナ支援としては、大型地雷除去機や、医薬品、医療インフラ復旧のための寄付や援助をすでに行っているとのこと。
スイスの世界的食品メーカーであるネスレ(Nestle)は、2022年12月にウクライナ西部のヴォリーニ州に麺生産のための新たな工場を建設することを発表。投資金額は4000万スイスフランで、2024年第3四半期の操業開始を予定している。製造された食品はウクライナだけでなく、EU諸国にも出荷予定で、同工場はヨーロッパでの食品製造の地域ハブとなることを目指すとのこと。1500名を雇用する予定。
ネスレはウクライナでは1994年より事業を行っており、すでに同国に3つの工場を所有している。国内で抱える従業員数は5500名。戦争開始からネスレはすでにウクライナに5300トンの食料支援などを行ったとのこと。
輸送オペレーション業務を行うポーランド企業のLaudeもウクライナへの関与を深めている。ロシアや中央アジアにあった自社の資産1億ユーロ相当を、ウクライナに移管したことを2023年8月に発表。今後も、鉄道車両やコンテナなどの購入を通じてウクライナへの投資を増やす計画だ。
Laudeによると、ウクライナ鉄道とも投資プログラムについて合意をすでにしており、また同社には数百人のウクライナ出身の専門家が在籍しているとのこと。Laudeのロシア子会社は、売却予定で、現在ロシア当局の承認待ちとのこと。Laude社は、ロシアから撤退し、ウクライナへの投資に切り替えた一つの例と言えるでしょう。
トルコの軍事企業バイカルは、2022年9月に同社の無人戦闘航空機「バイラクタル(Bayraktar)」の製造工場をウクライナに新たに建築することを発表。すでに2024年4月現在、キーウ郊外にて工場の建設が進んでおり、約500名の雇用を創出する予定。投資規模は約1億ドル。
バイラクタルは戦争開始当初、ロシアからの侵略に対抗するために大活躍。バイラクタルの名前を冠したウクライナの歌やテレビショー、ラジオができるなど、ウクライナ人の心を掴みました。Baykar社の取締役会会長兼技術責任者であるセルチュク・バイラクタル氏は、トルコのエルドアン大統領の娘婿。トルコによるウクライナ支援の中で、バイラクタル氏はウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と硬い握手を交わし、ウクライナ国内でのバイラクタル製造を約束したという経緯があります。
ドイツの軍事・自動車メーカーであるラインメタル(Rheinmetall)社は、2023年2月にウクライナに2億ユーロの投資をする計画を発表。同国に装甲車工場を建設し、年間400台の製造を目指す。すでに2023年10月にウクライナの国営軍事企業である「ウクルオボロンプロム」と共同で、ウクライナにて子会社を設立している。
報道によると、すでにウクライナ政府はラインメタルと共同で、国内にて兵器の修理や組み立てを行っている。また、2024年2月のミュンヘン安全保障会議では、ウクライナとドイツ側のカウンターパートとの間で、ラインメタルがウクライナに弾薬生産工場を開設する意図があることも発表されている。年間で10万発以上の155mm口径の砲弾を製造予定とのこと。
アイルランドの建築資材会社であるキングスパン・グループは、1965年設立。世界80ヵ国に212以上の工場を持ち、2万2000人以上の従業員を雇用しています。断熱パネルや断熱材がメインの商品で、サステイナブル(持続可能性)にも力を入れています。戦争開始からすぐの2022年4月に、ウクライナ西部にて高断熱建材やセントラルヒーティング製品の工場の建設を発表。投資金額は2.8億ドル。700名以上の雇用創出を目指すとのこと。
ウクライナ大手通信事業者キーウスター(Kyivstar)の親会社で、オランダに登記を置くビオン(VEON)グループは、2026年までにウクライナ復興に6億ドルを投資すると発表。また市場環境が良好である場合は、投資規模を将来的に5年間で10億ドルまで拡大するとしている。
キーウスターはウクライナにて2500万人以上の加入者を抱えます。また、VEONグループの取締役には、トランプ政権下で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏も入っています。
ウクライナのシュミハリ首相は2023年10月の第6回ドイツ・ウクライナ経済フォーラムにて、ドイツの建築資材メーカーのFixitがウクライナでの第2工場建設についてドイツ政府から投資保険を受け取ったと発表。Fixitは、ドイツの銀行から1200万ユーロの融資を受ける予定だ。
Fixitグループはヨーロッパ19ヵ国に68の拠点を持ち、約2500人の従業員を抱える。ウクライナでは2004年より事業を行っており、2008年には同国にて工場を建設した。
デンマークのビール醸造会社であるカールスバーグ(Carlsberg)は2023年6月、2023年にウクライナに15億フリヴニャ(約60億円)を投資することを発表。キーウ醸造所の生産ラインを刷新し、生産能力を80%向上させるとのこと。2023年11月には、同社のCEOがウクライナを訪問した。
カールスバーグは、1996年よりウクライナにて事業を展開。これまでに同国に10億ユーロを越える投資を実現している。キーウ、リヴィウ、ザポリージャにある醸造所で1300名以上を雇用するほか、関連分野で2万人以上の雇用を創出している。また、同社はウクライナのTOP25に入る納税企業でもある。
イギリスの軍事メーカーBAEシステムズは2023年、武器生産に関するウクライナとの共同プロジェクトを実施するため、同国に事務所を開設した。兵器の修理のほか、同社の兵器生産を現地化するプロジェクトを進めていく。また、同社がウクライナのパートナーと合弁会社を設立する予定もあるとのこと。
ウクライナへの海外直接投資(FDI)のフローを見ると、2021年が68億ドルだったのが、2022年には6億ドルに減少。しかし2023年には42億ドルまで回復しています。
ウクライナへは多くの日本企業も視線向けています。2024年2月19日、東京で開催された日・ウクライナ経済復興会議では合計で56個もの協力文書が両国間で調印されました。
日本企業とウクライナ企業との協業についてもまとめましたので、詳しくはこちらもご覧ください。
ウクライナ国民の立場から見ると、戦時下という極めて困難な状況下でもウクライナへの投資を続けてくれる外国企業の存在は、非常に心強く、感謝の気持ちでいっぱいです。これらの企業は、目先の利益だけでなく、ウクライナの将来性と潜在的な経済発展を信じ、長期的な視点に立って投資を行っていると感じられます。彼らの投資は、戦後のウクライナ経済の復興と発展に大きく貢献することでしょう。また、こうした支援は、ウクライナ国民に希望を与え、私たちが困難を乗り越えていく上で大きな励みになります。
ウクライナ国民として、ロシアの侵略という暗い現実に立ち向かう中、民主主義の理念を守り、私たちを支援し続ける外国企業の勇気と決意に心から称賛の意を表します。上記の企業は、独裁国家の脅威に屈することなく、自由と正義という普遍的価値観を追求しています。彼らは、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重し、国際法に基づく秩序を堅持するために行動しているのです。外国企業による投資は、単なる経済的支援にとどまりません。それは、民主主義という理想の実現に向けた強力なメッセージでもあります。彼らの行動は、独裁政権に対する断固たる抵抗の意思を示し、自由を愛するすべての人々に希望を与えてくれます。
ウクライナは今、民主主義のための戦いの最前線に立っています。そして、私たちの闘いを支えてくれる外国企業は、この戦いにおける頼もしい同盟者です。彼らの勇気ある行動は、国境を越えて自由と民主主義の価値観を広め、世界をより良い場所にするための礎となるでしょう。
一方で、客観的に見ると、戦時下でのビジネス活動にはリスクが伴うことも事実です。投資家の安全確保は重要な課題であり、ウクライナ政府としても、外国企業の事業活動を支援し、安全を保障していく必要があります。戦争が一日も早く終結し、平和が訪れることを心から願っています。そして、平和な環境の中で、ウクライナと外国企業との協力関係がさらに深まり、互いの発展につながることを期待しています。私たちウクライナ国民は、この困難な時期に寄り添ってくれる外国企業に感謝し、彼らとともにウクライナの明るい未来を築いていきたいと思います。
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