ウクライナスタートアップの米国アクセラレーターの選び方

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ウクライナスタートアップの米国アクセラレーターの選び方

ウクライナのスタートアップ、いや世界のスタートアップにとって、アメリカ市場で成功を収めることは1つの目標でありクライテリアです。まさにアメリカンドリーム。世界トップの経済大国での成功は、その後の発展に大きく貢献します。ウクライナスタートアップがアメリカ市場に参入するためのアクセラレーターの選び方をご紹介します。

そもそも、なぜアメリカ目指す?

ヨーロッパ、アジア、日本、中国、UAE、特にシンガポールが自信満々にベンチャー受け入れ体制を強化し前進しているにも関わらず、米国のスタートアップエコシステムはまだまだその先を行っていると言われています。なぜグローバル市場でこのような格差が生まれたのか?また、世界中の起業家やイノベーターを米国に惹きつけるものは何なのか?探っていきます。

アーリーステージの企業が米国を目指す理由はいくつかあり、まず挙げられるのは、グローバル・スタートアップ・エコシステム・インデックス2023で確認されているように、米国はスタートアップ・エコシステムの面で、常に世界No.1の座についています。

次に、米国市場は、多くのインキュベーター、アクセラレーター、プライベート・エクイティ、ベンチャー・キャピタル・ファンドなど、スタートアップのための資金と整備されたインフラへのアクセスを提供しています。特にメジャーなインキュベーターやアクセラレーターをご覧ください。

現在、米国はユニコーン(時価総額10億ドル以上の新興企業)の数が最も多く、Statistaによると、その数は700を超えています。米国には、グーグル、アマゾン、スペースXなど、今や世界的企業として成功を収めている『かつてのスタートアップ』も多く、世界中のスタートアップの原動力になっていると言っても良いでしょう。

そして、米国には多くの政府プログラム、助成金、その他の支援があります。例えば、バラク・オバマの時代には、国際起業家ルールが導入されました。これは、技術系スタートアップの創業者を対象とした特別なビザ・プログラムで、米国はこのプログラムに参加し、プロジェクトを実施し、ビジネスを発展させ、雇用を創出することを奨励しています。投資家はまだ見つかっていないものの、米国がその活動から利益を得るという論拠がある新興企業であれば、移転の申請を試みることができます。

また、当然のことながら、世界中からスタートアップやイノベーションを扱う人達が集まり、それは過去から現在に脈々と続いているわけですから、米国ではネットワーキングが発達しています。スタートアップの数が多ければ多いほど、協力関係、パートナーシップ、経験、アイデア、リソース、ひいてはチャンスも増え、事業のスピードやクオリティーアップに繋がります。一方で、競争が激しく脱落していくスタートアップの数も世界中で群を抜いています。

成長アクセラレーター

スタートアップの成長ツールのひとつに、国や企業、投資ファンドなどが提供するグロースアクセラレーターがあります。彼らのプログラムは通常3ヶ月から6ヶ月で、メンタリング、ビジネス専門知識、製品の強みと弱みの特定、ワークスペース、メディアプロモーション、そしてもちろん資金調達へのアクセスという形で価値を提供しています。

米国では、欧州と同様、ほとんどのアクセラレーターが新興企業(設立過程にある企業や開発の初期段階にあるプロジェクト)に焦点を当てています。実行可能性、成長性、潜在的な収益性を示すもの(成長ステージ)も視野に入っています。一方、アイデア段階の企業を対象とするアクセラレーターはほとんどありません。

投資に関しては、半数以上のアクセラレーターが、直接または関連ファンドを通じて、何らかの形で資金を提供しています。参加者全員に資金を提供するところもあれば、厳選した個々のプロジェクトにのみ資金を提供するところもあります。また、プログラムへの参加自体に手数料を課しているところもあります。

アクセラレーターは、あらゆる分野の新興企業を支援する場合もあれば、ヘルスケアや金融サービスなど特定の分野に特化したものを支援する場合もあります。一般的に、どこで誰とスタートアップを作るかは、成功に大きく関係すると言えるでしょう。

米国のトップスタートアップ都市(ランク)

1位(世界1位)サンフランシスコ
2位(世界2位)ニューヨーク
3位(世界4位)ロサンゼルス
4位(世界5位)ボストン  
5位(世界12位)シアトル

例えば、マサチューセッツ州ボストンは、エネルギー・環境、ヘルステック、EdTech分野のスタートアップにとって発展した環境を備えています。ボストンは世界的なランキングでも5位に位置し、米国で4本の指に入るエコシステムです。そのため、少なくとも25の関連アクセラレーターがあり、それぞれが年間40~50のプロジェクトの開発を加速させています。

ボストンを拠点とする史上最大のスタートアップ・アクセラレーター、MassChallengeを取り上げてみると、過去10年間で、4000以上のスタートアップを支援し、90億ドル以上を調達してきました。現在は、主にヘルステックに特化していますが、クライメートテック(気候テック、CO2排出量の削減や地球温暖化対策)、さらにはブルーテック(気候・海洋イノベーション)も積極的に展開しています。

例えば、HealthTechでは、Bio-convergence Track、高齢者の生活の質を向上させるAgeTechプログラム、Reproductive Healthプログラムなどのいずれかに応募することができ、各スタートアップの製品や技術ソリューションに最も関連性の高いものを選べばよいのです。

MassChallengeは株式投資を提供しませんが、その代わりに各参加者は賞金をかけて競い合う機会を得ます。これは「ゼロ資本・競争型モデル」と呼ばれ、アクセラレーターは、投資家や業界のリーダーたちにスタートアップを紹介するデモ・デーでクライマックスを迎えます。

アクセラレーター2024注目はやっぱりAI

ご存じのとおり、今、米国に限らず世界中のアクセラレーターの焦点が急速に変化していることは注目に値します。OpenAIのChatGPTの成功を受けて、AIスタートアップに焦点が当てられています。勿論、GAFAMと呼ばれる巨大テック企業もAIに力を注いでいますし、NVIDIAのような企業の勢いも止まりません。FinTech、eコマースなど分野を問わず、AIプログラムを持たないアクセラレーターを見つけるのは難しいほどです。ウクライナのスタートアップは、AIやデュアルユースのものが特に注目されており、欧州(例えばブリュッセル)のアクセラレーターはウクライナのスタートアップを強力に支援する計画があります。

シリコンバレーの主要アクセラレーター

Yコンビネーター(Y Combinator)は、年2回「多数の企業に少額ずつ」投資するマーケットリーダーであり続けています。現在、その数は4,000を超え、アクセラレーションを受けた全スタートアップの評価額の合計は6,000億ドルを超えています。Dropbox、Airbnb、Reddit、Stripe、Instacart、Coinbaseなど、ユニコーンを含むすべてがこのプログラムから生まれているのです。統計によると、Y Combinatorの卒業生企業の4%が売上高10億ドルを達成しています。Y Combinatorプログラムは、それぞれ1年に3ヶ月間行われ、まだ起業していないスタートアップから、起業して1年以上経過したスタートアップまで、さまざまな段階のスタートアップが参加できます。特にシード段階の企業、急成長中の技術系新興企業に最適です。PitchBookによると、昨夏のY Combinatorグループ(134社)の65%以上が、医療サービス、カスタマーサービス、販売、プログラミング、ゲームデザインなどを自動化するAIベースのツールを開発しているのも注目に値します。

米国には合計で700以上のアクセラレーターやビジネスインキュベーターがあり、Y CombinatorとMassChallengeに加え、Techstars500 StartupsPlug and PlaySOSVAlchemist Acceleratorがランキングの常連となっています。

日本のアクセラレーター

ウクライナのスタートアップの中で、日本市場と極めて親和性が高いテクノロージーの場合、私達JoinJapanが投資を含めた日本進出支援を行っています。日本に向けた革新的なアイデアを持っているものの、それを実現する機会がないスタートアップや、製品やソリューションやチームはあるものの、顧客やパートナーが見つからないスタートアップに対して、日本法人の設立、役員の紹介、パートナーの紹介、イグジットの支援などを行います。

ただ、 一般的には、ウクライナ人のスタートアップにとって、アメリカ市場で成功を収めることはまさにドリームですが、日本市場は目指すべき候補にすら入っていません。アメリカ、英国、EU、中国、アジア、アフリカ、中東などのほうが日本に比べると魅力的であるケースが多く、逆に、日本は言語の問題、世界的にみると市場規模が小さい、世界の常識が通用しない、市場の規則が分かりづらいなど、参入障壁が多いため、一般的には進出を目指す人は非常に珍しいです。 これはウクライナに限らず、世界中のスタートアップにとって同じ傾向があります。新興企業の中でもウーバーやエアビーのように体力がついてくると別で、日本市場を果敢に攻めてくるところもあります。

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