
ニュース・リサーチ
ウクライナは、戦争で勝利するために、尻に火がついた状態でドローン開発を進めています。空中ドローンはもちろんのこと、陸上ドローン、水上(水中)ドローンの開発も進めています。
政府機関、民間企業、NPO、様々な組織が、ドローン開発と同時に、ドローン操縦士の育成にも力を入れています。例えば、ロシアのランセット無人航空機を改良した『ペルン(Perun)』という名前のドローンも開発中です。いわゆる特攻(神風)無人機です。
ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相兼DX大臣は「ウクライナ人のエンジニアがランセット特攻無人機の類似品の開発に取り組んでいる」と公表しています。
また、同氏はPRESSINGプロジェクトとのインタビューにおいて、
「私たちはランセット改良型の無人機をいつ、そして、何機保有するかについて明確なビジョンを持っている」と語っています。同氏によれば「ランセットは効果的な兵器であるため、ウクライナ軍としてはできるだけ早く開発する必要がある」としています。
現時点で「ペルン」の詳細な特徴は明らかにされていません。が、寸法は発表されています。
長 — 1365 mm
幅 — 1370 mm
高 — 800 mm
ロシアの神風無人機「ランセット」にはいくつかの改良型があり、最も有名な「ランセット1」と「ランセット3」では重量や積載量が異なります。どのタイプのランセットを改良し、ウクライナ神風ドローン「ペルン」を開発するかは、今のところ機密です。
例えば「ランセット3」には以下のような特徴があります。
・最大離陸重量 12kg
・弾頭重量 3kg
・パワーリザーブ 40分
・飛行範囲 40〜70 km
・最高速度 300km
・推定費用 $35,000
ウクライナは、短期間と低コストで、これらのスペックを上回るドローンを大量に製作していくことでしょう。
ウクライナは水上ドローンの開発も急ピッチで行っています。小規模な海軍しか持たないウクライナですが、ロシアの黒海艦隊は、ウクライナの海上神風ドローンに怯えています。ウクライナ軍は、国産海上無人機「MAGURA V5」の能力を紹介しましたので、YouTubeのCNNの動画でご確認ください。
MAGURA V5は、海上での偵察、監視、捜索救助活動を行うことができ、爆薬を積めば神風ドローンにもなり得ます。公海上で使用するために設計されており、設計・製造はすべてウクライナで行われているのが特徴的です。
無人船の船体下部の形状は、高速で移動するように設計されており、中央部には小さな上部構造があり、その前方には回転カメラを装備することができます。また、MAGURA V5の最大航続距離は800kmで、黒海での作戦には必要十分です。
「このドローンは黒海のどのドローンよりも速い」とドローンの開発者は自信をのぞかせます。MARUGA V5ドローンは、画面付きのコントローラーで操縦・制御され、オペレーターはドローンから届くカメラ映像でドローンの周囲の状況を確認しながら、ターゲットに命中(爆発)するまでドローンを操作できます。
ウクライナ産MAGURA V5 の特徴として、
・長さ : 5.5m
・幅 : 1.5m
・巡航速度 : 22ノット(およそ40km/h)
・最大速度 : 42ノット(およそ77km/h)
・通信 : 空中中継器を備えた無線や衛星通信
これらが挙げられます。
ウクライナ産MARUGA V5ドローンは、神風無人機として、海上および湾内の軍事基地で敵の水上艦艇を攻撃できます。最大320キログラムの爆薬を運ぶことができるため、敵艦の被害も甚大です。ウクライナ産MARUGA V5海上ドローンは、ロシア領内の軍艦や、一時占領地域にあるロシア海軍基地を繰り返し攻撃し、順調に成果をあげており、増産体制を構築しています。
日本人の皆様も、テレビニュースなどで、ロシアの軍艦に突進していく神風無人艇(ボート)の映像をご覧になったことがあるかもしれません。また、一時的に占領されたクリミアとロシアを結ぶケルチ橋を攻撃し通行不能となるまで大破させたのも、ウクライナ産海上ドローンの偉業です。
その他としては、
●2022年10月、ウクライナ海軍の無人機がロシアのプロジェクト11356Rフリゲート「アドミラル・マカロフ」を攻撃。ロシアの掃海艇「イワン・ゴルベツ」も被害
●2022年11月、ウクライナ海軍の無人機がノヴォロシースクで石油港「シェスカリス」を攻撃
●2023年3月24日と4月24日、ウクライナ海軍の無人機がロシア黒海艦隊の基地があるセヴァストポリ湾を攻撃
なども戦果として挙げられます。
ウクライナ軍は、海上ドローンの独立旅団を結成するつもりですが、この部隊の存在は2023年8月時点では報じられていません。おそらく、クリミアのロシア軍事目標や黒海の船舶を偵察&攻撃する部隊であると予想できます。
水中(潜水)ドローン「マリチカ(Marichka)」をベースとした水中ドローン軍隊を国家プロジェクトとして進める動きがあります。水中ドローンの開発者によれば、水中ドローンには幅広い用途と多くの利点があり、例として下記を挙げています。
・乗組員がいない - 死傷者が出ない
・不可視性 - 水中ドローンは発見されにくい
・自律性 - ドローンはエネルギー効率の良いスタンバイモードに切り替えることができる
・航続距離 - 1000km以上
・攻撃力 - (具体的な量は公開せず)大量の弾薬を積載可能
・効率性 - 水中の橋脚を攻撃可能
・多用途性 - 戦闘、貨物、偵察の任務が可能
開発者はじめ関係者は『水中ドローン"マリチカ"は、ロシア占領軍の艦隊がある黒海やアゾフ海にとどまらず、カスピ海にも向かうと確信している』と語っており、敵の戦闘力を奪う遠隔無人兵器として期待されています。
水中ドローン「マリチカ」の正確な技術的特性は安全と戦略上の理由から公表されていませんが、電気推進を備えているようです。ご興味ある方は、YouTube動画で「マリチカ」のイメージをご覧いただけます。
海洋国家日本の潜水艦技術は世界最高峰と言われていますし、日本人からもウクライナの海上や水中のドローンに高い関心が集まってきています。
ウクライナ長距離ドローンの代表格は『UJ-22 AIRBORNE』です。最大航続距離は800kmで、首都モスクワを標的にできます。UJ-22 AIRBORONEは、Ukrjetが開発を進めている純国産ドローンで、ロシアによる大規模な侵略戦争がはじまる前から開発を行っており、2021年の武器展示会で初のお目見えを果たしました。
同社はこの他にも戦闘や偵察に特化したドローンの開発にも成功しており、世界各国の軍事関係者が注目しているドローン開発会社です。
UJ-22 AIRBORNEは、
・偵察:カメラとオプトエレクトロニクス・ステーションを搭載可
・輸送:ペイロード重量は20kg。例えば前線に医薬品や弾薬を送るのに便利。標準的な82mm迫撃砲弾4発やRPG-7用手榴弾数発などの弾薬を吊り下げ可
の用途でも活躍します。
UJ-22エアボーンの公表されている特性(技術的特徴も含む)を順不同で書き出してみます。
・最大離陸重量:85kg。
・全長:3300mm
・翼幅全長:4600 mm
・最大高度/最低:6000/50m
・最大航続距離:800km
・最大飛行時間:7時間
・飛行を制御できる最大半径:100km
・最大/巡航速度/最低:160/120/90 km/h
・エンジン:ガソリン2サイクル
・積載重量:20 kg
・動作温度:−40〜50℃
・操作:オートマチック、セミオートマチック、マニュアルモードで飛行
・打ち上げ準備時間:3分
などが挙げられます。
地上管制センターとUJ-22ドローン間の通信は、デジタル暗号化された双方向マイクロ波データ・チャンネルとデジタル暗号化された双方向UHFデータ・チャンネルを介して行われ、システムはパイロットとペイロード・オペレーターの2名で運用されます。
操縦席はエアコン、暖房、空調システムを備えたオフロード車にもセットできるため、神出鬼没と言え、モスクワやサンクトペテルブルクにUJ-22で「こんにちは(挨拶)」することが可能です。
UJ-22の構造はカーボンファイバーを使用しており、低空をゆっくりと飛行するため、地上の探知機からは見えにくいとされています。
UJ-22は、敵の人員や装甲車を高い命中率で破壊するための無誘導空中爆弾(弾薬)を搭載&投下することができます。弾薬に加え、カメラと光電子ステーションを搭載することもできます。
アンテナ通信システムは、2つの独立した冗長データ伝送チャンネルを持つ自動追尾式です。
ロシア領内でUJ-22が使用されたケースは多々見受けられますが、ウクライナ軍の関係者はこれらの出来事についてコメントしておらず、ロシア領内でのドローン攻撃を基本的には否定している立場です。例えば、
「ウクライナはロシア連邦の領土を攻撃していない。ウクライナは、自国の全領土を占領解除するために防衛戦を展開している。これは公理だ。ロシアではパニックと崩壊のプロセスが拡大しているようだが・・」
とウクライナ大統領府顧問のMykhailo Podolyakはツイートしています。
また、UJ-22以外に、ソ連時代のTu-141(ツポレフ141)を改造して作られたウクライナのTu-141長距離ドローンもあります。最大航続距離は1000kmです。詳しくはウィキペディアからご確認ください。
射程2,500kmのウクライナ製ドローン『Raybird-3』が "ドローン軍団 "に加わりました。ウクライナのSkyeton社が製造した小型戦術ドローンRaybird-3(レイバード3)の飛行距離は2500kmであると、ミハイロフェドロフDX大臣が発表しています。
また同氏は、レイバード3は、敵陣の背後を飛行し、ロシアの電子妨害にもかかわらず活動することができ、ハリコフ地方での反攻作戦でも活躍をしたと述べています。スカイトン社のレイバード3のイメージ動画もご覧ください。
ロシア占領軍はバラクリヤ近くのBUK複合施設からドローン(レイバード)を撃墜しようとしましたが見事に失敗・・。レイバード3はロシア軍の攻撃を回避しただけでなく、敵の施設を追跡し、味方の砲兵隊に座標を送信し、占領軍の弾薬庫の破壊に大きく貢献したようです。敵軍から撃墜されないドローンによる偵察活動は、多くのウクライナ軍人の命を守ることにも繋がります。
レイバード3はドローン、ポータブル地上管制ステーション、アンテナ、ランチャー(カタパルト型の機械式発射装置)で構成されています。詳しくは、レイバード3の参考動画をご覧ください。
ウクライナのエンジニアは、新しい攻撃用オクトコプター「ビッグ・バンデリク」を開発しました。
『敵の弾丸がエンジンのひとつに突き刺さったあとも、私たちのドローン(バンデリク)は7キロも飛んだ』
と開発者は語ります。
彼らは、2022年2月24日にロシアの大規模侵攻がスタートし、必要に迫られ、3月8日に攻撃型ドローンの製作を開始しました。
『まず、灌漑用の農業用UAVのさまざまなモデルを改造することから始めた。クアッドコプタータイプのプラットフォームを使い、ヘキサドローンにも取り組んだ。しかし、最も安定していたのはオクトコプターだった』
と開発責任者のマクシムは述べています。
「バンデリク」は、8基のエンジンを搭載し、31.5キログラムの総荷重を搭載できるプラットフォームで、ペイロードは8キログラムです。オクトサーキットは外乱(風)に最も強いことが証明されており、実際の戦闘や戦場に特化した機能が満載です。
『私たちのバンデリクには、弾薬の種類を個別に選択できる多機能投下システムが装備されているだけでなく、地上ステーションがネットワーク接続されており、世界中どこからでもドローンを制御することができる』
と開発陣は述べています。
実際に起きた出来事として開発責任者のマクシムは教えてくれました。
『それは2月のこと。戦闘任務についていたドローン操縦士の1人が、ドローンに原因不明の振動を感じ、挙動が安定せず、操縦が著しく困難になった。それでもドローンは戦闘地から7キロ後方のエリアに無事に帰還、着陸した。
私はドローン操縦士が送ってくれた着陸時のビデオ映像をみてびっくりした。そのドローンのモーターに、敵の弾丸が突き刺さっていたのだから・・。バンデリクは、弾丸をくらったときの衝撃に耐え、1つのモーターを失いながらも7キロ飛行し帰還できたわけだ』
たしかに戦闘任務につく攻撃型ドローンにとって、すぐに壊れない、部分的に破損してもすぐに墜落しないことはとても大切なファクターです。
バンデリクは電子妨害(電波)のテストを受けたときも、参加した6メーカーの中で、唯一空を飛べたドローンです。秒速10メートルの風が吹き荒れる中です。
いろいろなテストをクリアし、最終的にバンデリクはウクライナ国防省から承認されました。前線で多くの兵士を助けているバンデリクを大量生産するために、国防省も一体となって資金集めを行っています。
ウクライナのエンジニアは、時速30kmで最大100kgのペイロードを運ぶことができる地上型ドローン『ラテル(Ratel)』の開発に成功しました。
このドローンは、従来のFPVドローンと同様に、操縦装置とゴーグル/モニターを使ってパイロットが操縦します。制御構成には、航続距離を伸ばすためにMavicに搭載可能なトランスポンダを含めることもでき、『ハニービー』には遠隔起爆システムが搭載できます。ラテルのYouTube映像はこちらです。
『ラテル』地上ドローンの開発チームは、最前線の部隊からのフィードバックを入念に検証し続け、比較的困難な地形で、かなり強力な(つまり重量のある)戦闘ユニットを無人で移動させることができたり、敵の塹壕や陣地で電子戦の影響を最小限に抑えることができたりするドローンの開発を進めました。「開発⇒テスト⇒結果分析⇒改善」を幾度となく繰り返したそうです。
ラテル地上ドローンの詳細な技術特性や目標破壊能力については公開されていません。が、ウクライナ軍が大変満足したことは事実です。今もなお、前線からのフィードバックをもとにテストや改善が繰り返されており、用途に応じて幅広く柔軟な『改造』も行われています。偵察任務、弾薬輸送、採掘、発射など、様々な任務に特化した改造です。
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ウクライナの22歳の守備兵は、敵に見つかりにくい地上用ドローン「シルコ」を開発しました。「シルコ」はいわゆる神風対地ドローンであり、すでに前線に配備されています。
シルコは、1機あたり3万グリムナ(約12万円の)とかなり低コストで生産できるわりに、敵のレーダーに感知されにくく、弾薬の運搬、偵察、特攻(神風)として、前線においてとても重要な任務を担うことができます。組み立ても簡単です。敵の陣地に忍び寄ったり、戦車や兵士の群れに接近したり、塹壕に落下させて爆発させます。シルコの開発者は、現在、新しいバージョンの地上ドローンを開発中です。
ウクライナ領土には、ロシア占領軍により無数の地雷が敷設され、その完全撤去には750年以上かかると言われています。ロシアは、確認されているだけでも13種類の地雷をばらまき、その範囲は13万平方キロメートル(日本の国土の3分の1以上の面積)に上ります。
そして2023年9月時点で、戦争はまだまだ続いていますので、ウクライナが撤去する地雷よりもロシアが新しく敷設する地雷の量が多い状態です。
そのような中で、ウクライナは地雷撤去ドローンやロボットの開発、改良を急いでいます。開発された地上ドローンは、すでに地雷撤去や兵士の救助に役立っており、ウクライナの首都キーウで行われた国際産業展示会でも注目を浴びています。
地雷除去ドローンは、弾薬、配給品、食料、水などを運搬するためのプラットフォームを取り付けることができます。また、負傷者の救護や敵陣に機関銃で射撃するプラットフォームも開発されています。
積載重量は、地面の状況(凸凹道や舗装道など)によって異なり、およそ200〜500kgまで運搬できます。1回の充電で走れる航続距離は10〜50km程度です。ドローンの基本価格は320,000グリムナ(2023年9月時点の為替でおよそ8,600ドル)です。
現在は、資金調達、工場の拡大、工具の増設、職人集めを実施し、生産能力を大幅に拡大中です。
ウクライナは、持ち前の高いIT技術を活かして、人工知能(AI)テクノロジーを搭載したドローンの開発競争が盛んに行われています。求められる無人機は、商用であれ、軍用であれ、電子妨害電波やハッキングなど、想定しうる悪影響や攻撃に打ち勝つ必要があります。
ウクライナのドローン開発者達は、ロシアが頻繁に行う妨害電波を考慮し、ドローンに新型のAIソフトウェアを搭載し、常にドローンを安定飛行させ、予め選択された任務やターゲットを外さないテクノロジーを開発しています。
AI機能は、例えば、ターゲットが移動している場合でもドローンが任務を完了できるようにプログラムされており、特定の座標を追跡する一般的なドローンに比べて大幅に高い偵察・攻撃能力を持っています。
米国ワシントンポストは
『戦争のニーズがウクライナを一種の発明スーパーラボに変え、グーグルの元CEOエリック・シュミット氏を含む著名なビジネスマンから投資を集めはじめている』
と書いています。
現在、200以上のウクライナのドローン企業が、最前線の軍部隊と相互協力関係にあり、前線の兵士からのフィードバックをもとにドローンを改良し、敵の殺傷能力やスパイ能力を高めている状況です。
ウクライナ副首相兼DX大臣のミハイロ・フェドロフ氏は、ウクライナドローン軍団計画の責任者となっており「戦時下の今、24時間365日、ドローン技術競争が行われているし、そうあるべき」と発言しており、偵察・攻撃用ドローンを最大限に活用することで、ロシアの航空・砲撃面での優位性を少しでも削り取ろうとしています。
ちなみに、2022年、1万人以上のドローン操縦士の育成を行い、2023年の夏以降にさらに1万人の育成を予定しています。ドローン開発と同時に、操縦士の訓練にも余念がありません。
また、フェドロフ氏のチームは、企業と国防省との間のドローン契約締結プロセスを効率化・加速化しました。「本来2年かかる手続きを2カ月に短縮した」とキエフに拠点を置くドローンメーカー、ウォーバーズ・オブ・ウクライナの共同設立者であるドミトロ・コヴァルチュク氏は評価しています。
戦時下において、ウクライナ国防省はロシアのジャミング技術をドローン会社と共有し、最先端の電子戦装備に対して自社製品を開発・テストできるようにしているのも特徴的です。国防省や前線の兵士からの情報をもとに、ドローンシステムの脆弱性を減らし、性能を向上させるための調整を即座に行っています。
フェドロフ氏によると、ロシアは毎月約1,000機のウクライナ製ドローンを破壊しており、また、別の推計によると、毎月10,000機が破壊されているという情報もあり、ウクライナ全土の開発者や生産者たちは直ちにドローンの生産量を増やす方法を模索しています。
ウクライナ西部の街リヴィウでは、ツイスト・ロボティクス社のエンジニアが、ウクライナのFPVドローンを大幅にアップグレードできる人工知能ベースのソフトウェアのテストビデオを発表しています。
ウクライナが毎月数千機を生産している安価なUAVは、爆弾を搭載することはできますが、ロシア軍の妨害電波や障害物に弱いという欠点があります。そのような欠点をカバーするために、人工知能は有効です。
ツイスト・ロボティクス社の共同設立者であるロスティスラフ・オレンチン氏は「新しい人工知能ベースのターゲティング・システムは、妨害電波や障害物によって人間のオペレーターとの通信が途絶えても、UAVをターゲットにロックし続けることを可能にする」と語っています。
また同氏は「AIシステムとセンサーは、ターゲットの物理的特徴を認識し、いちど確定したターゲットに到達するまで、飛行経路を独自に調整・最適化しながら追跡できる」と発表しています。
グーグルの元幹部であるシュミット氏は、ウクライナのドローン市場に大変前向きで、他の投資家とともに、ドローンやその他の防衛技術に投資するウクライナのスタートアップ・アクセラレーターであるD3に1000万ドルを投資しています。
「ウクライナはイノベーションにおいて常に敵の先を行っている」とシュミット氏は発言しており、期待の大きさが伺えます。
人工知能技術について米国防総省に助言してきたシュミット氏は、人工知能ソフトウェアやGPSナビゲーションなしで動作するUAVなど、無人機技術におけるウクライナの功績(実戦によって裏付けられたテクノロジー)を歓迎するとともに「将来、陸・海・空・水中における戦場で、AIを搭載した神風ドローンの軍団形成に重要な役割を果たすだろう」という見解を示しています。
そして、「戦争の未来は、ドローンに支配され、ドローンによって戦われることになるだろう」とシュミットは締めくくっています。
私達JOINJAPANも微力ながら、ウクライナのドローン開発を支援し続けます。目指すはウクライナの完全勝利です。
ウクライナのドローン軍は2023年7月だけで新たに3000人の兵士を追加訓練しています。ウクライナは、ロシア軍の前線や後方問わず、輸送車、戦車、戦闘機、レーダーシステム、電子システム、指揮所、弾薬庫、兵站などを絶え間ないドローン攻撃で破壊することに大成功しており、その作戦を継続・拡大するために、新たなドローン軍の兵士の訓練を進めています。
兵士たちはドローン理論と実践の訓練を受けています。例えば、偵察コプター、FPVドローン、爆撃機の操縦方法などを学んでいます。訓練を受け、最終試験に合格したドローン兵士のみ、最前線でロシアの装備と交戦していくことになります。
そして、これらの訓練は始まりに過ぎず、更に1万人のドローン兵(パイロット)の訓練が決まっています。ドローン理論や操縦を訓練する学校も次々と設立されており、2023年8月前後だけでも新たに5つの学校がドローン軍団の仲間入りを果たしています。
訓練はドローン軍にとって最優先事項であり、プロのオペレーターだけが、ドローンの機能を効果的に使って偵察し、大砲を調整し、ロシアの装備を破壊することができるようになります。ミハイロフェドロフDX大臣兼副首相は『私たちの兵士がより多くのドローンを持ち、その適切な操作方法を知ることができるよう、官民あげて努力を続けていこう』と呼びかけています。
この写真は、ウクライナのリヴィウ市にある学校で、ドローンの操縦を学ぶ生徒たちです。これがウクライナの新しい現実です。彼らは現実を受け入れ、国民が一丸となって悪(占領軍ロシア)に立ち向かっています。
ドローンの操縦スキルや知識は「ウクライナの防衛」という科目で身につけます。ウクライナでは、長引く戦争に対応し、自国内での兵器の開発や、それを十分に扱える操作の習得を急ピッチで進めています。
ウクライナのSBU特殊部隊は、敵国ロシアに恐怖を与える準備を着々と進めています。その中の1つに、長距離ドローンのFUIB(第1ウクライナ国際銀行)との共同資金調達が大詰めを迎えてきていることが挙げられます。FUIBのオーナーはこの戦争で積極的に支援を繰り広げているウクライナのオリガルヒ『リナト・アフメトフ』です。
SBUは「ウクライナ人なら誰でも参加してほしい!ロシアからの占領者に"温かい挨拶"をお見舞いする機会はまだまだある!」と意気込み十分です。
SBUはFUIBと共同で、ウクライナ製長距離無人機「モロック」33機の購入資金6,000万ウアフを調達しています。これら無人機の助けを借り、SBU特殊作戦センター「A」の戦闘員、特に「ホワイト・ウルフ」部隊の戦闘員は、ロシア占領軍を徹底的に痛めつけ、彼らが一刻も早くウクライナから立ち去るように暗躍しています。
「中・長距離ドローンは敵への対応策の1つだ。この無人機の航続距離は800キロある。敵国にとってSBUからの炎は、より明るく、想定外のものになるだろう。そしてドローンは、毎日戦場で勝利を勝ち取っている兵士たちの1人1人の命を守る!」
と、SBU特殊作戦センターAのホワイト・ウルフ・ユニットの責任者であるオレ・イェメッツ氏は語っています。
プーチンを正しくないと思うなら、ウクライナのドローン開発を支援するのも良いと思います。
2023年8月28日、ウクライナのゼレンスキー大統領は『ウクライナの武器生産に関する個別会議』を開催しました。戦略産業省、ウクロボロンプロム、国内生産施設の責任者らを集め、ウクライナ製の銃、ウクライナ製の砲弾、ウクライナ国産ドローン、ミサイル、装甲車などの開発について話し合いました。
ゼレンスキー政権は、前々から国内の武器生産能力の向上をはかっています。ロシアの占領軍に勝利するためには、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンなど他国の武器供与だけに頼りきらず、ウクライナ国産の兵器の生産の最大化が重要であり、それが勝利への唯一の道であると考えています。
ゼレンスキー大統領は『ウクライナならできる。資金もある。ウクライナの防衛産業はとても良い結果を生むだろう』と述べています。
『我々はドローン軍隊を強化しており、これまでに1,000機以上のドローンと30台のロボットシステムを前線に送ってきた。これらはウクライナの革新的な開発であり、軍が遠隔操作で戦うのを助ける。最も重要なことはウクライナ兵が命を落とさないことだ』
とウクライナの副首相兼DX大臣のミハイロフェドロフ氏は2023年8月31日に自身のテレグラムチャンネルで述べました。
ウクライナでは、陸海空(水中)ドローンに限らず、世界屈指のIT技術を活かし、画期的で最新鋭の兵器を開発・生産しはじめました。NATO各国からの武器支援だけでは、ロシアを打ち負かすことが難しいこともあり、国産兵器の生産スピードを加速しています。
特に、ミハイロフェドロフ大臣の場合、軍人の死傷者を減らすために、偵察・攻撃・自爆ドローン、セイバー遠隔操作戦闘砲塔、武器や装備の輸送支援ロボットなど、オペレーターが安全な場所からリモートで操作し、敵の陣地を攻撃できる兵器の開発を急いでいます。また、実際の戦場で殺傷能力の高さや有効性を証明し、生産体制の大幅な強化に取り組んでいます。
同氏は、
『現代の戦争では、テクノロジーとイノベーションが重要な役割を果たしている。勝つためには、さらに多くのドローンと軍事的イノベーションが必要だ。より多くの優秀なエンジニアを求む!』
と発言しています。
(以下2023年9月15日追加記事)
ミハイロフェドロフ副首相兼DX大臣は、ウクライナドローン開発の現状について下記のように述べています。
『ウクライナドローンの数とその使用効果は、勝利のスピードに影響する。2022年12月に無人機量産本部を設置した後、今年だけでウクライナのUAVの生産量を昨年の100倍以上に増やすことに成功した。ウクライナドローンの戦果は世界中のニュースでも確認できるでしょう。
ロシア占領軍は、人員、装甲車、防空システム、船舶の損失という点でウクライナドローンの脅威を感じている。無人機はまだ十分ではない。もっともっとドローンが必要だ。
ウクライナはこの1年でドローン開発という立ち上がったばかりの産業全体を作り上げた。すべてはまだまだこれからだ。
第一の課題は、国防軍のすべての部隊にあらゆる種類のドローンを完全に装備させること。我々には戦略がある。生産施設も開発されている。官僚的な障壁は取り除かれつつある(関税の撤廃、管理機関の廃止、企業の研究開発マージンの増加など)。オペレーター・トレーニングの新しいシステムも開発されている。最新の教義が開発されている。納品数も増加している。
来年度予算案には、ウクライナドローンのために480億UAH(約13億ドル≒1900億円)が含まれている。国会が予算案を支持することを願っている。これは今年を上回るものであり、私は国会と政府が早いうちに資金提供の機会を増やすと確信している。
そしてまた、ドローン軍の建設は急ピッチで進んでいる。より多くの無人機があれば、より多くの兵士の命が救われ、より多くの占領者が破壊されることになる。ウクライナのドローン産業を支援してくれる大統領、首相、閣僚、そして国会に感謝する。UAV軍の開発に投資してくれる皆さんにも心から感謝する』
私達JoinJapanは、ウクライナドローン開発を支援しています。JoinJapanのボードメンバーの日本人は下記のように考え、結論づけています。
・日本政府はG7の中心となり、ロシアによる侵略戦争を避難し、制裁も課しているが、ウクライナへの支援は人道支援のみ。しかし、侵略された側のウクライナに必要なのは直ちに勝利すること。人道支援では勝利できない。話の通じない武力で襲ってくる侵略者(ロシア)を止めるためには武力で勝つ他道がない。『同情するなら武器をくれ』が本音である。ウクライナは9年間毎日、国民の命と領土と自由を奪われ続けていることを忘れてはならない。
とJoinJapanの日本人メンバーは考えています。
そこで私達が着目したのが、ウクライナのIT能力と、それを基にした『ウクライナ産ドローン開発』です。ドローンはこの戦争において戦況を左右するだけの大きな力を持っています。偵察、運搬、爆弾投下、自爆、いずれの任務もウクライナ軍に大きく貢献しています。
ドローン戦争とも言われるウクライナ戦争において、陸海空のドローンをウクライナ国内で生産するための支援(寄付や投資)をしたいと思う日本人は私達だけではないかもしれません。日本政府は人道支援しかできなくても、日本の個人や民間企業は、ウクライナが勝利するために必要な支援ができます。
10年後、ウクライナが開発したドローンは、日本や台湾の防衛に役立っているかもしれません。ドローンの開発や技術、また、操縦士の育成において、ウクライナと日本は、互いに知恵を出し合う理由も価値もあると思っています。