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先ずウクライナの水上ドローンは海上ドローン、海洋ドローン、海軍ドローンとも呼ばれます。ウクライナは世界初の海洋ドローン艦隊を結成しています。これは2024年4月時点で進行中であり、これからも大きな進化を遂げると言われています。ウクライナ海洋ドローンは、ロシア艦艇を度々攻撃しており、その損害は大破や沈没など甚大なものとなっており、その結果、ロシアの黒海艦隊の大部分が黒海の港を離れたと報告されています。
海軍用語で無人水上艦艇(USV)と呼ばれるウクライナ独自の海軍ドローンは、ウクライナ人がロシア海軍との積極的な対決を開始することを可能にしました。日本や台湾のような海洋国家にとって、これはとても大きな意味を持ちます。ウクライナは、軍艦無し、無人艇のみでロシアから黒海を守っており、これは戦争の大きな転換点の一部と言えるでしょう。ウクライナ人にとって『セヴァストポリ湾の出口でミサイルを搭載したロシア艦船を阻止すること』は、民族解放戦争における無人水上艦艇(USV)の任務の一部であり、とても重要な意味を持つことは言うまでもありません。事実、ロシア軍はウクライナ軍に敗走を続け、ロシア海軍はセヴァストポリ湾をほぼ封鎖されています。
2023年10月末、ウクライナのUAVとUSVがセヴァストポリのロシア海軍艦船を攻撃するために使用されました。その結果、フリゲート艦アドミラル・マカロフと掃海艇イワン・ゴルベツの2隻が損害を受け、それ以降、ロシア艦隊は殆ど湾から出られなくなっています。
長さ:5.5メートル
総重量:1000kgまで
航続距離: 最大400km
航続距離:最大430海里(800km)
自律性:最大60時間
ペイロード: 最大200 kg
最大速度:43ノット(時速80キロ)
ナビゲーション方式:自動GNSS(全地球航法衛星システム)、慣性、目視
ビデオ送信: HDフォーマットで最大3つのビデオストリームを同時送信
暗号化保護:256ビット暗号化
米国の攻撃型ドローンの大半のモデルは、海上監視、遠隔地雷除去、対潜水艦戦、港湾防衛用として設計されています。これらの要件は、有事ではなく平時に作られたものです。したがって、自爆用(神風特攻用)としての機構は、米正規艦隊の必須防衛や撃退装備の概念に含まれていませんでした。
一方で、ウクライナ海軍の無人偵察機は本格的な戦争の産物です。まさに生きるか死ぬか、やるかやられるかの中で生まれました。ウクライナ戦争における『実践、実戦』を頼りに、スピード重視の低コストで研究開発製造が進められています。兵器を作る際に「平和的基準」に頼ると、過度に複雑で過度に高価な解決策につながっている、と言うこともできます。
ウクライナの海上ドローン(NBK/USV)は小型で、標的が明確で、使い捨てです。デザインは普通、至ってシンプルで、必要であれば、このようなドローンはどこのガレージでも手で組み立てることができます。海洋ドローン1機の価格は約274,000ドルですが、更に低コスト化が進んでいます。
ウクライナの海上ドローンのパワープラントは、BRP(ボンバルディア)社のSEA DOOジェットスキーの3気筒ROTAXエンジンです。原理的には、ウクライナの神風ドローンは、レクリエーション用ジェットスキーの部品から作られていると言えます。そしてコストの大半は、制御システムと製造に起因しています。
ウクライナの海上無人艇(水上ドローン)は、ロシア艦隊から黒海とウクライナを守る上で重要な役割を果たしています。
水上ドローンは、黒海沿岸部や港湾周辺を巡回し、ロシア艦隊の動向を監視します。リアルタイムの情報収集により、ウクライナ軍は敵の位置や活動を把握し、迅速に対応することができます。
水上ドローンは、ロシア艦隊がウクライナ領海に接近した際、早期に警告を発することができます。これにより、ウクライナ軍は防衛態勢を整え、敵の侵入を阻止する時間的猶予を得ることができます。
一部の水上ドローンは、爆発物を搭載し、ロシア艦艇への攻撃が可能です。小型で機動性に優れた水上ドローンは、敵艦隊に接近し、奇襲攻撃を仕掛けることができます。これにより、ロシア海軍の行動を制限し、黒海での優位性を保つことができます。
水中探査が可能な水上ドローンは、ロシアが設置した機雷の検知や処理に活用されます。機雷による脅威を減らすことで、ウクライナ海軍の艦艇や商船の安全な航行を確保することができます。
有人艦艇と比較して、水上ドローンは運用コストが低く、人的損失のリスクも小さいです。多数の水上ドローンを展開することで、広大な黒海を効果的に監視し、ロシアの脅威に対処することができます。
ウクライナの水上ドローンは、ロシアとの軍事的緊張が高まる中、黒海における抑止力として重要な役割を担っています。高度な技術を駆使した水上ドローンは、ウクライナの海洋主権を守り、ロシアの軍事的優位性に対抗する上で欠かせない存在となっています。
ウクライナの海上無人艇(水上ドローン)が、ロシア黒海艦隊に対して優位に戦闘を進めるためには、いくつかの課題があります。
現在のウクライナの水上ドローンは、大型の軍艦と直接対決するには、火力や防御能力が不足しています。より高度な武装と防護システムを備えた水上ドローンの開発が求められます。そしてそれは現在進行中です。
電子戦環境下では、水上ドローンとの通信や遠隔操作が困難になる可能性があります。妨害に強い通信システムや自律性の高いAI制御の導入が必要です。
水上ドローンを他の戦力(航空機、艦艇、沿岸防衛システムなど)と効果的に連携させる必要があります。異なるプラットフォーム間の情報共有と調整を可能にする指揮統制システムの整備が求められます。
ロシア黒海艦隊は、艦艇数や火力において優位性を持っています。水上ドローンの数を増やすとともに、多数の水上ドローンによる協調的な戦術の開発が必要です。
黒海は気象条件が厳しく、波浪や潮流の影響を受けやすい海域です。過酷な海洋環境下でも安定して運用できる水上ドローンの設計が求められます。
水上ドローンの運用には、専門的な知識とスキルが必要です。オペレーターの育成と訓練を強化し、実戦での効果的な運用を可能にする必要があります。
これらの課題を克服することで、ウクライナの水上ドローンは、ロシア黒海艦隊に対してより優位に戦闘を進めることができるでしょう。ただし、水上ドローンは万能ではなく、他の戦力と連携しつつ、状況に応じて柔軟に運用することが重要です。
ウクライナの海上無人艇(自爆型ドローン含む)の開発、運用、そしてロシア艦隊に対する戦果は、海洋国家である日本の防衛や海上自衛隊に対して重要な示唆を与える可能性があります。
ウクライナの事例は、大規模な艦隊を持たない国でも、無人艇を効果的に運用することで、より強大な海軍力に対抗できることを示しています。日本も同様に、無人艇を非対称戦力として活用することで、周辺国の海軍力に対する抑止力を高められるかもしれません。
ウクライナの無人艇は、主に沿岸部の防衛に用いられています。日本も長い海岸線を持つため、無人艇を活用した沿岸警備や監視システムの強化が有効である可能性があります。
ウクライナの無人艇技術は、日本の防衛産業にとって参考になるかもしれません。自律性の高い無人艇や、高度なセンサー、通信システムなどの技術は、日本の無人艇開発にも応用できる可能性があります。
ウクライナの無人艇運用は、日本の海上自衛隊の運用コンセプトにも影響を与える可能性があります。無人艇と有人艦艇の協調的運用や、無人艇を活用した新たな戦術の開発などが考えられます。
一方で、自爆型ドローンの使用には法的・倫理的な課題もあります。日本は、国際法や人道法の観点から、無人艇の運用における適切なルールを検討する必要があるでしょう。
ただし、日本とウクライナでは、安全保障環境や防衛政策が大きく異なるため、ウクライナの事例をそのまま適用することは難しいでしょう。日本は、自国の状況に合わせて、無人艇の開発・運用のあり方を慎重に検討していく必要があります。いずれにせよ、ウクライナの無人艇の活躍は、海洋防衛におけるゲームチェンジャーとなる可能性を秘めており、日本を含む海洋国家にとって重要な教訓となるでしょう。
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