ウクライナの貿易相手国は、2014年のクリミア危機、その後のドンバス戦争、そして2022年2月から始まったロシアによるウクライナへの全面侵攻によりどのように変化していったのでしょうか。本記事では、ウクライナのスペシャリストであるJoinJapanが、同国の輸出・輸入相手国TOP10についてまとめてみました。
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ウクライナの貿易相手国は、2014年のクリミア危機、その後のドンバス戦争、そして2022年2月から始まったロシアによるウクライナへの全面侵攻によりどのように変化していったのでしょうか。本記事では、ウクライナのスペシャリストであるJoinJapanが、同国の輸出・輸入相手国TOP10についてまとめてみました。
注1)以下のデータはウクライナの統計局に基づく。
注2)以下の輸出データはすべて商品のみ、サービスは含まない。
まず初めに2014年のクリミア危機およびドンバス戦争開始前のデータとして、2013年の貿易データを見ていきます。
ウクライナの統計局によると、2013年の同国の輸出総額は633億1202万ドルでした。輸出先の内訳は以下のとおりです:
順位 | 国名 | 輸出額(USD) | 前年比増減 |
1位 | ロシア | 150億6512万ドル | -14.6% |
2位 | トルコ | 38億547万ドル | +3.3% |
3位 | 中国 | 27億2667万ドル | +53.4% |
4位 | エジプト | 27億2056万ドル | -6.1% |
5位 | ポーランド | 25億4782万ドル | -1.1% |
6位 | イタリア | 23億5763万ドル | -4.9% |
7位 | カザフスタン | 21億2002万ドル | -13.8% |
8位 | ベラルーシ | 19億8361万ドル | -11.9% |
9位 | インド | 19億7474万ドル | -13.8% |
10位 | ドイツ | 16億378万ドル | -2.5% |
29位 | 日本 | 4億5843万ドル | +43% |
また、2013年のウクライナの輸入総額は769億6396万ドルでした。輸入元の国別データは以下のとおりです:
順位 | 国名 | 輸入額(USD) | 前年比増減 |
1位 | ロシア | 232億3420万ドル | -15.3% |
2位 | 中国 | 79億75万ドル | ±0% |
3位 | ドイツ | 67億7100万ドル | -0.5% |
4位 | ポーランド | 40億6868万ドル | +14.1% |
5位 | ベラルーシ | 36億524万ドル | -28.9% |
6位 | 米国 | 27億5935万ドル | -5% |
7位 | イタリア | 20億8665万ドル | -6.6% |
8位 | トルコ | 18億5268万ドル | -5.1% |
9位 | フランス | 17億2972万ドル | +3.9% |
10位 | ハンガリー | 14億51万ドル | +20.8% |
14位 | 日本 | 9億8495万ドル | -17.8% |
※輸出・輸入データはクリミアやドンバスなどを含むウクライナ全土のもの。
上記の通り、2013年時点では、ロシアとの貿易が圧倒的に多かったことがわかります。ロシアが占める割合は、輸出総額で約24%、輸入総額で約30%でした。
また、上位10カ国にベラルーシやカザフスタンなどのCIS諸国(旧ソ連構成国)が入っていたことも特徴です。統計によると、CIS諸国9カ国が占める割合は、輸出総額で約35%、輸入総額で約36%でした。
次に2019年の貿易データを見ていきます。この時期はすでにクリミア危機およびドンバス戦争をウクライナは経験しており、また同年2月にはウクライナ憲法に同国がEU・NATOへの加盟を目指すことが明記され、社会が大きく変化しました。
ウクライナの統計局によると、2019年の同国の輸出総額は500億5460万ドルでした。輸出先の内訳は以下のとおりです:
順位 | 国名 | 輸出額(USD) | 前年比増減 |
1位 | 中国 | 35億9309万ドル | +63.3% |
2位 | ポーランド | 32億9584万ドル | +1.2% |
3位 | ロシア | 32億4281万ドル | -11.2% |
4位 | トルコ | 26億1902万ドル | +11.3% |
5位 | イタリア | 24億1887万ドル | -8% |
6位 | ドイツ | 23億8300万ドル | +7.9% |
7位 | エジプト | 22億5407万ドル | +44.8% |
8位 | インド | 20億2405万ドル | -7% |
9位 | オランダ | 18億4842万ドル | +15.3% |
10位 | ハンガリー | 15億6280万ドル | -5.1% |
45位 | 日本 | 2億4994万ドル | +7.8% |
また、2019年のウクライナの輸入総額は608億17万ドルでした。輸入元の国別データは以下のとおりです:
順位 | 国名 | 輸入額(USD) | 前年比増減 |
1位 | 中国 | 92億480万ドル | +21% |
2位 | ロシア | 69億8501万ドル | -13.7% |
3位 | ドイツ | 59億8687万ドル | +0.1% |
4位 | ポーランド | 41億908万ドル | +12.8% |
5位 | ベラルーシ | 37億5192万ドル | -0.1% |
6位 | 米国 | 32億8443万ドル | +10.9% |
7位 | トルコ | 23億5544万ドル | +37.4% |
8位 | イタリア | 20億7475万ドル | +2.1% |
9位 | フランス | 16億5266万ドル | +11.6% |
10位 | スイス | 15億9209万ドル | -3.2% |
14位 | 日本 | 9億6289万ドル | +30.6% |
※輸出・輸入データはロシアによる被占領地域(クリミアおよびドンバス地方の一部)を除く。
2013年と比較しますと、ロシアとの貿易量が大きく落ち込んだことがわかります。しかしながら未だに輸出および輸入で、ロシアやベラルーシとの取引量は十分にありました。また、中国が輸出、輸入でともに1位となっているのが目を引きます。
次に、ロシアがウクライナに全面侵攻を開始した後の貿易データを見てみます。
ウクライナの統計局によると、2023年の同国の輸出総額は361億8290万ドルでした。輸出先の内訳は以下のとおりです:
順位 | 国名 | 輸出額(USD) | 前年比増減 |
1位 | ポーランド | 47億5538万ドル | -28.5% |
2位 | ルーマニア | 37億6488万ドル | -3.4% |
3位 | 中国 | 24億635万ドル | -2.5% |
4位 | トルコ | 23億6850万ドル | -19.5% |
5位 | ドイツ | 20億1967万ドル | -10.8% |
6位 | スペイン | 20億826万ドル | +27.7% |
7位 | イタリア | 15億3689万ドル | -6.7% |
8位 | オランダ | 14億9086万ドル | -3.2% |
9位 | ハンガリー | 11億8487万ドル | -47.8% |
10位 | エジプト | 10億8502万ドル | +35.3% |
63位 | 日本 | 3505万ドル | -66.7% |
また、2023年のウクライナの輸入総額は635億6699万ドルでした。輸入元の国別データは以下のとおりです:
順位 | 国名 | 輸入額(USD) | 前年比増減 |
1位 | 中国 | 104億4450万ドル | +20.5% |
2位 | ポーランド | 65億7775万ドル | +19.8% |
3位 | ドイツ | 50億6167万ドル | +10.9% |
4位 | トルコ | 47億2337万ドル | +40% |
5位 | 米国 | 28億6284万ドル | +31.8% |
6位 | イタリア | 22億7822万ドル | +26.5% |
7位 | ブルガリア | 22億2132万ドル | +6.7% |
8位 | インド | 18億8234万ドル | +11.8% |
9位 | チェコ | 17億8942万ドル | +22.2% |
10位 | フランス | 17億5919万ドル | +42.7% |
19位 | 日本 | 9億826万ドル | +40.9% |
※輸出・輸入データはロシアによる被占領地域および戦闘地域を除く。
上記からわかることは、ウクライナの貿易相手国が完全に西側諸国にシフトしたことです。TOP10にはロシアやベラルーシは完全に脱落。ロシアとの輸出・輸入は、統計データ上は測定不能になっており、ベラルーシとはかろうじてありますが、貿易量はアフリカの小国と同じレベルになっています。
ロシアとの貿易ルートが完全に切れたことにより、ウクライナの西にある隣国(ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、ブルガリア)の存在感が増しています。TOP10には入っていませんが、隣国のスロバキア、モルドバのほか、オーストリア、チェコ、バルト三国なども輸出・輸入相手国の上位に来ています。
中国が輸入元として突出した1位となっているのも目を引きます。これには戦争で必要な無人航空機(ドローン)を中国から大量に輸入していることも一因です。
日本との関係で言うと、日本からの輸入額は2013年〜2023年において、約9億ドルと安定して推移しているものの、日本への輸出量が2013年の4億5854万ドルから、2023年には3505万ドルと激減しています。日本とウクライナの経済面での関係強化が謳われる今日ですが、貿易データを見る限りはそのような状況とは程遠いことがわかります。
ウクライナの輸出額および輸入額の推移については、すでにJoinJapanが「ウクライナ経済状況や成長率を各経済指標から読み解く」の記事にて触れていますので、ぜひこちらもご覧ください。
データの推移を見ることで、いかにここ10年でウクライナの貿易相手国が大きく変わったのかがわかりました。
ウクライナの特定の国との取引品目や取引額の推移などについて、さらなる詳細をお知りになりたい方は、ぜひお気軽にJoinJapanまでお問い合わせください。専門のリサーチチームがあなたのお力になります。