ウクライナのIT産業は高度な技術力とコスト効率の良さを兼ね備えており、特にソフトウェア開発、AI、データ解析、クラウドソリューション分野で強みを発揮しています。日本企業がウクライナITを活用することで、エンジニア人材の確保や最新技術の導入が可能となり、競争力の向上に繋がります。特に、アウトソーシングやR&D拠点の設立など、柔軟な協業形態がメリットです。
ニュース・リサーチ
ウクライナのIT企業、エンジニア、そしてSaaSソリューションなどに興味を持つ企業には特徴があります。例えば、課題の面では、
・新規クライアントの獲得
・最先端の技術力やソリューションを持つ
・売り上げと利益の拡大
・自社資産や人材の拡大
などの課題をお持ちであることが多いです。つまり、これらの課題を解決する手段がウクライナにあり、それがテック企業の経営者にとって魅力となっています。
欧米のテック企業は、2000年代初頭からMicrosoft社、Apple社、Google社を皮切りに、Fortune500の企業の20%(5社に1社)がウクライナにR&Dセンターを構え、ウクライナエンジニアを活用しています。これは欧米テック企業の成長戦略に欠かせない部分であり、戦時下の今でも同じく、密接な関係が続いています。
本邦テック企業が国外に活路を見出す場合には、一般的にはまずはアジア(インド、中国、ベトナム等)におけるオフショア開発を行います。そして、そこでは競争に勝てない(課題を克服できない)と判断した企業は、南米などではなく中東欧のIT活用に辿り着きます。
本邦企業の場合、まずは日本国内(特に地方)のIT企業や人材に着目し、M&A、協業、雇用したりしますが、熾烈な国内競争の壁と、管理者を含む高いスキルのエンジニアがそもそも圧倒的に不足していることで頭打ちになる傾向があると聞きます。
ウクライナITで今後の成長戦略の一部を見出す企業は、例えば、下記のような企業や分野に関心を持ち、買収や協業を検討します。
IoTやシミュレーション技術を活用したデジタルツインソリューションを提供する企業は、製造業やインフラ管理において今後の需要が高まる分野です。
データ解析や予測分析、AIベースのソリューションを強化するために、AI技術を持つスタートアップや企業を買収し、自社の製品やサービスの価値を向上させることができます。ITコンサルティングやソフトウェア開発を中心にしている企業の場合、AIやデータ分析の分野で強みを持つ企業の買収は、デジタル変革を推進するクライアント向けのサービス拡充に寄与します。AIの活用は営業の自動化、価格の最適化、自然言語処理(NLP)、画像認識など、多くの産業で欠かせません。高いスキルをもったシニアエンジニアや研究者がウクライナに豊富に存在します。
世界も日本も、これからの街づくり、農業、林業、環境やインフラ整備に欠かせないのが衛星データ解析技術です。衛星データ解析ソリューションは、日本のように地形が複雑で山岳地帯もあり、天候の変化が激しい国においても非常に有効です。農業や林業の効率的な管理、災害対策、持続可能な資源利用など、さまざまな分野で活用できます。そして、それを持つ日本企業はまだ少数なため、成長戦略に組み込みたい企業が増えています。衛星から得られる大量のデータを収集して解析する技術は、ビッグデータの領域に属します。IT企業として、このようなデータを処理し、分析結果を顧客に提供するのが主な業務となります。また、衛星画像やデータを解析するために、AIや機械学習の技術が多く活用されます。例えば、土地利用の変化や環境モニタリング、気象予測などの分野では、AIがデータパターンを認識し、自動的に解析を行います。そして、衛星データは膨大であるため、クラウドベースのインフラが必要です。IT企業はクラウド技術を使って、データの保存や処理、解析を行い、ユーザーにアクセス可能な形で提供します。したがって、衛星データ解析を行う企業は、IT企業の一形態として見なされ、特にデータ処理、AI、クラウド、セキュリティなど、さまざまなIT技術を組み合わせて業務を遂行しています。
クラウドサービスのニーズが高まる中、自社のソリューションをクラウドベースにするための技術を持つ企業(プロバイダー)の買収は、競争力を高める要素になります。クラウド技術は多くの企業のデジタル基盤を支えていますので、クラウドサービスにさらに強みを持ちたい場合、AWSやAzureに特化したクラウドインテグレーション企業やクラウド管理企業の買収は、クライアントに包括的なソリューションを提供するのに役立ちます。
エンジニアの不足と高単価によって、ノーコードやローコードにおける開発が増え、AIの進化によりノーコードの自由度も増しています。成長過程にあるノーコード企業を今のうちに傘下に置くことは検討に値します。
より高度なシミュレーション機能を持つ企業を買収することで、自社製品の機能を強化し、ユーザーのニーズに応えることができます。
CADやエンジニアリング分野での教育を提供する企業を買収することで、顧客へのサポートや新たな収益源を確保できます。
拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を活用した設計やトレーニングソリューションを提供する企業は、製造業や建設業、教育関連事業において注目されています。
環境に配慮した技術や製品を提供する企業を買収することで、エコ意識の高い市場にアプローチできます。
多くの産業におけるデジタル化が進む中、サイバーセキュリティの重要性が増しています。この分野の専門企業を買収することで、顧客の信頼を得ることができます。特にウクライナは、サイバー攻撃、プロパガンダ、偽情報、フェイクニュース、ディープフェイクと戦う力が最も強い国の1つで、情報戦により各国政府や世論、国際機関からの支援を勝ち取っています。
自動化やロボット技術を持つ企業を買収することで、自社のソリューションをより効率的にし、顧客の生産性向上に寄与できます。
プロダクトの使いやすさやデザインに特化した企業を買収することで、製品の価値を高め、顧客満足度を向上させることが可能です。日本国内向けから世界市場に目を向けたUI/UXの開発が可能になります。
ウクライナは、ロシアによる侵略戦争を通じて、ドローンや衛星やロボットに限らず、多くの分野で有事と平時の両方で用いることができる開発を余儀なくされました。それらノウハウは、一部の日本企業に大変有益なものとなります。
医療、製造業、金融など、特定の業界に強みを持つソフトウェア開発会社を買収することで、グローバルに通用する業界特化型で業界最先端のソリューションを持つことができ、日本国内での競争優位性を高める助けになります。例えば、ウクライナは、フィンテックの発展が急速に進んでいる地域の一つです。金融関連のデジタルソリューションを強化したい場合、ブロックチェーン技術や決済システム、デジタルバンキング分野に強みを持つフィンテック企業との連携は有益です。
ウクライナには、欧米各国の主要マーケットに向けてデジタルマーケティングやEコマースソリューションを提供している企業が多いです。これらの企業との業務提携は、グローバルなデジタルトランスフォーメーション展開や、マーケティング戦略をたてる上で日本国内にはない優位性に繋がる可能性があります。
例えば上記のような分野において、ウクライナITを活用し、技術力や市場での競争力をさらに強化できるでしょう。また、戦時下のウクライナでビジネス戦略をたてる上では、リスクとベネフィットとに余裕を持たせる必要があります。
ウクライナのITを活用する際のデメリットやリスク、注意点には以下の要素があります。これらを踏まえた上で、ウクライナ企業との協業を進めていく必要があります。
ウクライナは現在も戦争状態にあり、インフラや労働環境が不安定です。特に、停電や通信障害が起こる可能性があり、プロジェクトの進行に支障が出ることがあります。
ウクライナと日本では、労働法やデータ保護に関する法律が異なります。特にデータの取り扱いについては、日本企業が現地の法律を理解し、適切に対応する必要があります。
ウクライナの通貨フリブナは不安定であり、円やドルとの為替レートの変動が大きいため、コスト管理に影響を与えることがあります。
日本のIT企業がウクライナのITを活用する場合、いくつか大きな恩恵を受けるべきです。ウクライナは高度なIT技術を有し、特にソフトウェア開発やデータ解析、AI分野において強みを発揮しています。例えば、日本企業がクラウドソリューションプロダクトやエンジニアリングの強化を目指す中で、日本国内のエンジニアを活用するよりも、ウクライナの技術力を活用したほうが、最新技術の導入と革新が加速し、国内他社への優位性に繋がる可能性は高いです。
さらに、ウクライナのIT企業はコスト効率が高く、優秀なエンジニアを比較的低コストで確保することができるため、日本企業の利益拡大やアウトバウンド強化(新たな挑戦をしやすい社内の雰囲気づくり)にも貢献します。R&D拠点をウクライナに設置し、共同開発を行うことで、新たなプロダクトやサービスの開発にも有効です。ウクライナのITを取り入れることで、国際競争力が高まり、各国市場における上場に向けた基盤作りも一層強化できるでしょう。
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