ウクライナの不動産投資

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ウクライナの不動産投資

ウクライナ不動産投資について前置き

2022年2月24日に開始した、ロシアによるウクライナへの軍事侵略は、2023年になった今でも続いています。


ウクライナを拠点とする私達JoinJapanの活動は、ビジネスよりもボランティアや支援活動が中心となりました。


そんな中、少しずつお問い合わせが増えてきているのが「不動産投資」です。


各メディアや政府から、「ウクライナ勝利」で戦争が終わるという報道が増えてきていることもあり、まだまだ戦争の出口が明確に分からないにも関わらず、今のうちに投資準備を進めたい方が増えているのです。


ウクライナの不動産に投資したい主な理由は、


・戦争はいずれ終わる。ウクライナ(自由主義陣営)の勝利をもって終わる。その後の戦後復興期、特にキエフは欧州でもっともHOTな観光都市になるだろう


・昨年の夏頃に比べると底値ではないが、賃貸はもちろん、中古物件の購入価格は下がっており、土地を含め、今ならほぼ底値での購入になるだろう


・将来的にEUやNATOに加盟するだろう


というのが挙げられます。


お問い合わせがあった内容は、


・地震がないウクライナ。築年数は古くても良いので、キエフの中心地(メイン通り沿い)で、中古アパートの売り物件はあるか?


・将来的に、購入した物件を外国人観光客向けに貸し出したい。外国人観光客(家族連れ)にとって便利な場所で、ツーベッドルームの物件はあるか?


・土地を購入できるか?その際に安心できる法律家(弁護士や書類作成の代行業者)を準備できるか?
などが挙げられます。


弊社が考える、ウクライナ不動産に投資した場合のリスクとしては、様々考えられます。代表的なものとしては、


・まだ戦時下のため、購入した物件にミサイルが堕ちないと言い切れない


・「ウクライナ勝利」で戦争が終わると世界の大部分が確信しているが、万一、ロシアの占領下に置かれた場合には、ウクライナの人口は激減し、外国人観光客も訪れない


・戦時下において、不動産購入手続きが途中で一時停止する可能性がある(長期間の停電でオーナーと連絡がとりづらくなるなど)


・ロシアによる核攻撃や、戦争が年単位で長期化する恐れがゼロとは言えない

などが挙げられます。


弊社として考える結論としては、ロシアによるウクライナへの侵略戦争の真っ只中であるがゆえに不動産価格は底値に近い、一方で、戦時下ゆえのリスクも色々考えられるため、弊社では、ウクライナ不動産への投資はおすすめしません。

が、しかし、それでもウクライナ不動産に興味関心を持つ日本人がいらっしゃることも事実でので、ウクライナ不動産について詳しく掘り下げていきます。

ウクライナ不動産 情報収集から購入方法までを解説

ウクライナでの戦争が長期化する中、世界中の投資家が、ウクライナの「戦争後」を見据え、すでに行動に移っていることは日本のニュースなどをご覧になってご存知かもしれません。その中で、今大きな注目を集めているのが「ウクライナ不動産投資」です。

2022年2月の戦争開始からウクライナの不動産価格は大幅に変動し、東部のハルキウでは約40-50%の下落、首都のキーウ(キエフ)では約10-20%の下落が伝えられています。しかしながら戦争当初の混乱を乗り越え、2023年にはウクライナの不動産価格は徐々に回復の兆しをみせています(資料)。下記に、ウクライナへの不動産投資に興味のある日本人投資家向けに、情報収集から不動産購入の手続きまでを解説していきます。

ウクライナ不動産価格、ここ20年の流れ

1991年にソ連から独立後、90年代の混乱期を乗り越え、2000年代にはウクライナの不動産価格は大きな上昇をみました。2000年、首都キーウにて1Kのマンションを約1万ドルで買えたのが、2008年には15万ドルを超える価格まで上昇しています。その後、リーマンショックによる金融危機の影響で不動産価格は大きく価格を下げ、2013年には1Kのマンション価格は約9.4万ドルとなりました。2014年には、マイダン革命、クリミア危機、ドンバス戦争が起こり、それらの影響で不動産価格はさらに下がり、2017年に約7.4万ドルの底値を記録しました。しかしそこから不動産価格は上昇を始め、2021年には約10万ドルまで価格を回復しています。

参考: ウクライナ語のページですが、興味のある方は自動翻訳を利用してお読みください。2000年代から今日まで、キエフの不動産価格がどのように変動したか(ウクライナ語)

ウクライナ不動産投資の魅力と将来性(メリット)


〇 低価格で物件が購入可能なウクライナ不動産

ウクライナの不動産の購入を考える際の最も大きな魅力は、なんといっても「価格」です。首都キーウでは、2023年9月現在、新築マンションの1Kの完成物件を約5万ドル(約725万円)から購入することが可能です(内装工事別)。将来EUに加盟する可能性が高いヨーロッパの国の首都の物件で、この価格で買えるのは投資家にとっての大きな魅力の一つでしょう。また、ウクライナではプレビルド方式(新築物件の建築中に物件代金を支払う方式)で新築マンションを売り出すことが一般的であり、この方式を利用する場合は、物件への投資の初期コストをより抑えることができます。

〇 ウクライナ不動産の高い将来性

2023年時点において、この戦争が終わったあとには、次のことが予想されています。

● 戦争中、国外に避難していたウクライナ人や外国人がウクライナへ帰還する

● 主に西側諸国からウクライナへの本格投資が開始される

● 航空便の再開によって、ウクライナ国外からの外国人観光客が大幅に増加する

● 戦争に勝利した『自由と平和のシンボル』として世界各国のメディアから注目される

● 2023年、ウクライナ国家予算の約43%を「戦費」 が占めているが、終戦後のこの費用の大幅な減少による財政状況の改善および経済発展に関わる予算が増加する

など、各種要因により、ウクライナの不動産価格の上昇が見込まれており、個人投資家のみならず各国の機関投資家が注目しています。

それもそのはず、終戦後(または大規模な戦闘行為の終了後)にウクライナで不動産価格が上昇したのには2014年〜2015年のドンバス戦争の先例があります。2014年4月から始まったウクライナ東部のドンバス地方での戦争は、2015年2月のミンスク合意(通称:ミンスク2)により、一旦の落ち着きを見せ、大規模な戦闘行為は終了しました。この流れの中で、2014年から下落を続けたウクライナの不動産価格は2017年に底値をつけ、それ以降は上昇を続け、2021年には「戦前(この場合はドンバス戦争の前)」の価格まで回復しています。

この流れに沿った場合、現在のウクライナでの戦争が終了、若しくは激しい戦闘行為が落ち着いたのち、再び不動産価格が大きく上昇する可能性は十分にあるとみる投資家が増えています。

〇 自然災害の影響を受けづらいウクライナ不動産

ウクライナは自然災害が少ないというメリットがあります。日本のような大きな地震はウクライナではほぼ起きませんし、火山による災害もありません。台風やハリケーンもありませんし、洪水や土砂災害も少ないです。

〇 ウクライナ不動産の購入でウクライナの永住権が取得可能

ウクライナの不動産の購入の際に、ウクライナの永住権を取得できる可能性があることも見逃せません。これはウクライナ政府が、海外からの投資の呼び込みのために行なっているプログラムの一つを利用するものであり、例えば下記のような流れがあります。

1) ウクライナ経済への投資を目的とし、ウクライナで会社を設立
2) 会社の口座に投資資金を入金
3) 会社名義で10万ドル以上のウクライナの物件を購入
4) 物件の購入を投資として登録し、永住権を申請
5) 審査の上、最大1年以内に永住権が交付

ウクライナが将来的にEUやNATOに加盟した際には、ウクライナの永住権を保有していることはEU圏内でのビジネスを展開する上で大きなメリットになることが予想されます。私達は、投資によるウクライナ永住権取得のサポートも行なっていますので、ご興味のある方はお問い合わせください。

ウクライナ不動産投資のリスクとデメリット

建設は減少し、需要は崩壊したが、価格は下がっていない』とフォーブスは、Ernst & Young による戦時中の不動産市場の研究をもとに述べています。それでも不動産投資にリスクはつきものですので挙げていきます。

〇 戦争によるリスクを排除できないウクライナ不動産

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は未だ終わりが見えません。メディアの報道では、毎日戦争の犠牲になった方々や破壊された建物の映像が繰り返し報道されています。一方で、前線などの戦闘地域外では、これまでと同じく一般市民による生活が続いています。私達JoinJapanの拠点があるここキーウでは、マクドナルドやスーパーに多くの人が集まり、公園などの憩いの場にも賑わいがあります。キーウなどの主要都市には西側諸国から供与された防空システムが装備されており、2023年9月現在では、高い迎撃率を誇り、ウクライナの街を守っています。しかしながら、不幸にもロケットやミサイルの攻撃、または迎撃時の破片の落下などにより、街の一部の建物が破損されるケースがあるのは厳然たる事実です。つまり、ウクライナの不動産にはロシアによる攻撃の影響に晒される可能性が常にあり、これは不動産購入時のリスクです。また今回の戦争はすでに1年半にも及んでおり、まだ終わりが見えません。終戦後にウクライナ経済の発展が予想されるとしても、この戦争があとどれくらい続き、どのような形で終わるかは、不確定要素が多く、このことも現時点でウクライナ不動産の購入際にネガティブに働く要素です。

〇 ウクライナ不動産事情を知らないことによる投資リスク

知らない国の不動産を買うのは常にリスクです。ウクライナはヨーロッパの国といっても、まだEUには加盟しておらず、法による統治が十分ではありません。例えば不動産の登記方法や、外国人に対する規制の有無、資金の移動方法、銀行口座の開設・管理方法、不動産購入時の支払い方法、それらにかかる税金などに対応するには、現地の事情をよく知るパートナーが必須です。それらの情報をインターネット上から取得したとしても、ウクライナでの実情とは異なるケース(新しいルールへの変更)が多々あるからです。また、ウクライナでは若者を中心に英語でのコミュニケーションが可能になりつつあるものの、手続きに係る書類はすべてウクライナ語です。よって、信頼できるパートナー(主に法律家や公証人)によるサポートや翻訳作業が欠かせません。

〇 円安によって感じるウクライナ不動産の割高感(デメリット)

2023年9月現在、1USDは145円近辺で推移しており、歴史的な円安状態にあります。ウクライナの不動産価格は主に米ドルが基準になっていますので、日本にある円を米ドルに両替して不動産を購入する方にとっては、円安によるデメリット(割高感)があります。

ウクライナ不動産に関するおすすめ情報サイト4選

ウクライナ不動産に興味のある方に、現地の不動産情報サイトを使っての情報収集をお勧めします。下記にウクライナ人がよく利用している不動産情報サイトを4つ紹介します。これらのサイトはウクライナ語またはロシア語ですので、ブラウザの翻訳機能を使って日本語や英語でご覧ください。

1)DOM.RIA

上記のサイトから、ウクライナのマンションや住宅などの売買、賃貸情報について確認できます。新築および中古、両方の物件を検索可能です。地図上から気になる物件を選択し、価格などを確認することもできます。

4)OLX

無料で広告や情報を掲載できる掲示板サイトです。世界30カ国でサービスを提供しており、ウクライナでは無料広告掲示板サイトとしてトップシェアを誇ります。日本でのメルカリのように不用品を売買できるフリマ機能の他、不動産の売買情報の掲示にもよく使われます。仲介業者を挟まずダイレクトに不動産を売り買いできるのがOLXの大きな特徴です。

ウクライナ不動産投資 プレビルドと新築完成物件の違い

〇 ウクライナの新築プレビルド物件

ウクライナの新築分譲マンション(コンドミニアム)は、プレビルド方式で販売されるのが一般的です。つまり、マンションが建築中の段階で、物件代金を支払う方式であり、マンション完成後に、自身が代金を支払った部屋の所有権を登記する形となります。プレビルドの物件は、完成物件に比べ、安く購入できるのが投資家にとっては魅力的です。しかし物件の竣工・引き渡しが予定より遅れることは日常茶飯事であり、また建築中にデベロッパーが倒産するケースもあり、ハイリスクハイリターンであるとも言えます。

〇 ウクライナの新築完成物件

リスクを抑えるには、新築の完成物件を購入する方が好ましいと言えます。しかしながらウクライナでは、人気のある物件はプレビルドの段階ですべて売り出されてしまい、完成時には販売している物件がないケースがよくあります。したがって、新築の完成物件を購入する場合、多くはプレビルドの段階で物件に投資していた人から転売してもらう形になりますが、このように物件を短期間で転売する取引に対しては、通常より高い税金がかかります。つまり、それらが上乗せされた価格での購入(+不動産仲介業者の手数料)となり、物件取得価格が高額(割高)になってしまうデメリットがあります。また、ウクライナでは完成した新築物件は内装工事がされていない状態(コンクリートむき出し)で引き渡されるケースが多く、この場合、新築物件購入後に自ら内装工事の手配をする必要があります。内装工事にかかる費用は建築材料の質やデザイン、浴槽やキッチンなどのブランド、施工業者などによりケースバイケースで、1㎡あたり400~1000ドルは一般的です。例えば100㎡の部屋の場合、4~10万ドル程度の内装費用がかかる事を考慮する必要があります。

ウクライナ不動産の購入方法

実際にウクライナの不動産を購入する場合の大まかな流れを解説していきます。

〇 ウクライナ不動産購入(投資)に向けた情報収集

先述の「ウクライナ不動産に関するおすすめ情報サイト4選」に挙げたサイトを活用し、気になる不動産をピックアップしていきます。その際、物件の評価で主に気をつけるべき点には以下が挙げられます。

1) 十分な実績のあるデベロッパー(不動産開発事業者)による開発物件か(例えばこれまでにマンション建築プロジェクトが1、2件しかなかった場合はリスク高)

2) デベロッパーの他の開発物件で問題が発生していないか

3) 開発の進捗状況の報告があるか(工期に遅れがないか、または建築が止まっていないか)

4) 建築許可などの書類面で問題がないか(問題のある土地に建築されていないか)

また、並行して、デベロッパーのサイトからの情報収集を推奨します。上記4つのサイトでは正しい売値が表示されていないケースや、物件の詳細が記載されていないケースもあるため、デベロッパーのサイトから詳細な写真やビデオでの確認をお勧めしています。必要に応じて、デベロッパーのサイトでメルマガ登録する他、直接電話やメールで
問い合わせることで、価格情報などの詳細情報を取得することができます。デベロッパーや物件ごとにフォーラムサイトが作成され、そこで物件購入者や購入予定者が意見交換しているケースが多いので、興味のある方はインターネット上にて『物件名 + форум』で検索し、更なる情報収集を行うと良いでしょう。

〇 ウクライナ不動産購入(投資)前の物件の見学

気になった物件を複数リストアップできたら、次は、物件の見学です。プレビルドや新築完成物件の場合は、まずその物件の開発主(デベロッパー)に連絡を入れ、物件の見学が可能か問い合わせます。中古物件の場合は、その物件を取り扱う不動産仲介業者やオーナーに連絡し、見学の可否や日時を問い合わせます。電話でのやり取りが一般的ですが、TelegramやViberなど、メッセンジャーアプリからの問い合わせにも多くの仲介業者は対応しています。また、中古物件の見学の際には以下の点を仲介業者または売主に確認することをおすすめします。

1) 該当物件の公共料金の未払いがないか

2) 該当物件が共同名義(二人以上が所有)か否か

3) 該当物件に誰も住所登録していないか(もし物件に売主または第三者が住所登録している場合、売買成立後に問題になる可能性が高く、購入する物件には誰も住所登録していないのが好ましい)

4) 該当物件が裁判沙汰になっていないか

5) 該当物件を購入する場合に払う仲介業者への手数料金額(一般的には5%)

6) 購入時にかかる税金支払いを売主と買主の間でどのように割り振るか(売主または買主のどちらか一方が全額を負担するのか、それとも折半するか)

これらは最低限確認が必要ですし、その他物件の状況(地形、路面、近隣の施設など)によって確認すべき点は増えます。なお、一般的にウクライナの物件見学でお金をとられることはありません。不動産仲介業者の担当者の対応が良ければ、チップとして交通費(タクシー代)程度を渡すと喜ばれます。

〇 ウクライナ不動産購入手続き

購入物件を確定したら購入手続きに入ります。デベロッパーからプレビルド物件または新築完成物件を購入する場合の主な流れは次のとおりです。

1) デベロッパーと仮契約書を結ぶ(公証人による認証が必要)

2) 仮契約書で指定された期間内に、指定された口座に物件購入金額を入金(プレビルドの場合は、初回は手付金だけで、建築段階ごとに残り金額を順次支払うケースもあり)

3) プレビルドの場合:完成後、物件の確認を現地で行い、問題なければ受領書にサイン

4) 完成物件への国からの居住許可が下りた後、所有権登記のための最終契約(公証人による認証が必要)。物件の登記や税金の支払いなど。

中古物件を売主から購入する場合の主な流れは次の通りです。

1) 物件の売主との間で身分証などを相互提示。物件の登記簿謄本などの書類を確認。

2) 物件の売主と仮契約書を結び、手付金を支払う(通常、不動産仲介業者が仮契約書を作成するとともに、契約時には立ち会う。また、公証人による認証が必要。)

3) 売主は必要なすべての書類を準備。買主は仮契約書で指定された期間内に物件購入金額を準備。

4) 本契約。仲介業者および公証人立ち会いのもと、売買契約書にサインし、物件金額を全額支払う。指定する銀行口座への入金または現金での支払い(通常、アメリカドルでの支払い)。物件の所有権移転・登記手続き、税金の支払い。公証人および仲介業者への手数料支払い。

実際の不動産売買時には、ウクライナ各地域における不動産売買の裏も表も知り尽くしている経験豊富な法律家や人物によるサポートが欠かせません(推奨します)。一般的な通訳者では、不動産売買に関する知識が乏しいため、ミスが多発します。