ウクライナマーケティング・市場調査

ウクライナマーケティング・市場調査

ウクライナマーケティングや市場調査

(2023年6月更新) 

貴社がウクライナ市場でビジネスを発展させていくために便利な情報をまとめます。詳細は事業内容や活動時期によって変わりますので、マーケティングやリサーチが必要な方は、別途お問い合わせください。 また、オンラインのマーケティングリサーチも確認をお願いします。

欧米各国の商務省や経済産業省によると、ウクライナは大きなメリットとは別に、ビジネスを始める上での障壁も認められていますので、ウクライナでビジネスを開始する際に注意すべき要件やリスクについても挙げていきます。別ページにて「ウクライナ進出に役立つ情報」もまとめてあります。 

ウクライナ市場についての基本情報 

・ウクライナの人口は、4300万人ほど(日本の3分の1くらい) 

・ウクライナの構成民族は、ウクライナ人77.8%、ロシア人17.3%、ベラルーシ人0.6%、モルドバ人0.5%、クリミアタタール人0.5%、ブルガリア人0.4%、ハンガリー人0.3%、ルーマニア人0.3%、ポーランド人0.3%、ユダヤ人0.2%、その他の1.8% 

・ウクライナの首都はキーウ(キエフ)で人口は市内で300万人ほど 

・キーウ近郊を含めると推定400万人ほど 

・人口の69.9%が都市部居住 キーウ300万人、ハルキウ140万人、オデーサ100万人、ドニプロ95万人、ドネツク90万人、リヴィウ85万人 

・ウクライナの男女比 女性のほうが多く、女性1人当たり0.86人の男性 

・ウクライナの人口年齢比 0~14歳16%、15~64歳67%、65歳以上17% 

・ウクライナの年齢の中央値 41.8歳 

・ウクライナの平均世帯人数 2.58人 

・ウクライナの経済成長率 2021年 3.35%  22年 -30.26%  23年 -3.00% 

・ウクライナの学校教育 4年間の初等教育、5年間の中等教育、3年間の高等教育 

・ウクライナの労働力 14%が農業、25%が工業、61%がサービス業 

・ウクライナ 平均給与420ドル(月額) 

ウクライナ市場の概要(2023年5月現在) 

2023年5月時点において、ウクライナ国内には戒厳令が敷かれており、いわゆる戦時下における国家運営がされています。ロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナの経済・金融情勢に多大な影響を及ぼしており、戦争がもたらした悲惨な人道的危機と地政学的な不安定な状態と並び、経済活動も著しく抑制されています。 

危機が和らぐにつれて経済状況は安定し、回復していくと予想されているものの、多くの分野においては未だ予想しきれないのが実情です。短期的には、人口の3分の1以上が戦争によって避難したため、労働供給不足も問題視されています。また、農地、電力設備、インフラの破壊によって、生産や物流にも大きな損害が出ています。世界銀行は、ウクライナ戦争による復旧・復興費用は、最低でも総額3490億ドル、戦前の経済規模の1.5倍になると試算しています。 

国際通貨基金(IMF)と世界銀行は、ウクライナにおいて歴史的に深いつながりと確固たる存在感があり、将来来たるべき大復興への全般的な支持を表明しています。 

ウクライナのマーケットオポチュニティ 

2023年5月現在で、ウクライナ市場において将来性が高い有望な分野、主要なインフラプロジェクトとして下記が挙げられます。 

ウクライナのIT(オフショア開発、ITエンジニア教育など) 

ウクライナのアグリビジネス 

ウクライナの教育分野(特にSTEM教育) 

ウクライナの医療分野(医療機器やサービス) 

ウクライナのエネルギー分野(石油やガス機器) 

ウクライナの防衛や治安分野(安全・セキュリティ) 

ウクライナのインフラストラクチャー(新幹線、港など) 

ウクライナの観光分野 

ウクライナの不動産投資 

ウクライナのITビジネス 

ウクライナのITビジネスは投資も輸出額も年々増加しています。特に、世界の先進企業はソフトウェア開発の拠点としてウクライナ人エンジニアの活用を拡大し続けています。これについては、別途詳しく「ウクライナIT オフショア開発レポート」をご覧ください。 

ウクライナのアグリビジネス 

ウクライナが農業国であり、ヨーロッパの食物倉庫であることは、小学生や中学生の教科書で学びますから、世界的に有名な話です。そして実際、ウクライナのベストプロスペクトな産業分野がアグリビジネスです。 

しかし2022年2月、ロシアの侵攻により、ウクライナの農業部門は甚大な被害を受けています。戦前の農産物輸出額は年間278億ドルで、ウクライナの総輸出額の41%を占めていたました。国連食糧農業機関は、戦争によってウクライナの農業部門に100億ドル以上の損害が生じると推定しています。例えば、2022年夏まででも、破損した農業機械の交換・修理費用で10億ドル以上、破壊された穀物貯蔵施設のコストで3億ドル以上、失われた家畜で2億ドル以上です。 

ロシアの侵攻以前、ウクライナの穀物輸出の98%は黒海経由でした。がしかし、ロシアはそれを妨害しています。食料をも武器にし世界の食糧安全保障を脅かしています。国連は黒海穀物イニシアティブ(BSGI)を仲介し、オデッサの3つの港からトルコへの穀物輸出を促進していますが、いまだ黒海経由の貿易量は戦前の能力を下回ったままです。 

ただし、ウクライナ農業省も国外の専門機関も、ウクライナの農業部門は回復すると予測しています。戦後、ウクライナ政府は灌漑・排水戦略の実施を再開し、農家が灌漑・排水技術に投資するインセンティブを与え、より大規模な農業が行えると予想しています。 

例えば、農業機械・設備メーカーの販売見通しについて長期的に肯定的な見方をしています。 

・トラクター 

・ハーベスター 

・耕うん機 

・播種(種まき)機 

・散布機・肥料分配機 

・穀物保管庫 

・灌漑インフラ 

・成長促進剤や微量栄養素を含む農業用化学物質 

・食品加工・包装機器 

 ウクライナの農業は、大量の原料を輸出しているにもかかわらず、非効率な物流をおこなっていることで有名です。そのような損失や不利な条件を見直すことで、短期的には鈍化しても、長期的には投資も生産能力も倍増すると専門家はみています。 

例えば、食品加工機器およびバイオプロセス技術のサプライヤーの販売見通しについて、戦後 

肯定的な見方をしています。例を挙げます。 

・澱粉糖類 

・酵母エキス 

・燃料用エタノール 

・アミノ酸 

・カルボキシル酸 

・バイオディーゼル 

・動物油脂・植物油 

・菓子類 

ウクライナの教育マーケット 

ウクライナにおける教育はベストプロスペクトな産業分野です。GDPのおよそ5%を教育分野に向けています。ロシアの侵攻により、ウクライナでは2,000以上の学校と大学が被害を受け、200以上が破壊されました。世界銀行はウクライナの教育セクターの再建に90億ドル以上の費用がかかると見積もっています。 

ウクライナ難民の約半数は子どもたちです。ウクライナ教育省は、国内外にいる子供たちにオンライン教育プラットフォームへのアクセスを提供し、約85%の学校が2021-2022年の学年を修了することができました。 

オンライン教育、STEM( science, technology, engineering and mathematics)教育、留学プログラムなどの需要は堅調に伸びています。 

ウクライナの医療マーケット(医療機器、サービス) 

医療もウクライナのベストプロスペクトな産業分野です。 

ロシアの本格的な侵攻の結果、ウクライナは医療や公衆衛生の課題に直面しています。2022年11月、ウクライナ保健大臣は、ロシアの砲撃により956の医療施設が被害を受け、144が破壊されたと報告しました。2023年5月現在でも、ロシアが不当占領しているエリアにおいては、ウクライナ国民は医薬品、医療、清潔な飲料水を手に入れることができないでいます。 

一方、戦時下の特殊な環境下に置かれながらも、ウクライナの医療制度は戦時中のニーズに適応してきた側面があります。各国からの支援もありました。病院はスタッフを再編成し、外傷治療に重点を置いています。手術用品、麻酔薬、輸血キット、集中治療室設備、必須医薬品を戦闘の激しい地域に届けることは困難ですが、ニーズに対応し適応しています。 

国際通貨基金(IMF)をはじめとする国際金融機関は、ウクライナの医療分野における復興や長期的な医療マーケットへの支援を表明しています。 

ウクライナのエネルギー分野(オイル&ガス機器) 

ガスも、ウクライナのベストプロスペクトな産業分野です。 

ウクライナはエネルギー安全保障戦略の一環として、他国に依存しないエネルギーの独立性を高めることを目的に、燃料供給の多様化と石油・天然ガス生産の改善に取り組んでいます。国内生産を増やすために、欧米の先進国からの設備や技術の供給が増しています。有望株は以下の通りです。 

石油関連の機械 

・125トンおよび180トンの吊り上げ能力を持つ移動式ワークオーバーリグ 

・井戸用ケーシングパイプ、油井用チュービング、掘削用チュービング 

・掘削泥水および関連サービス 

・ダウンホールドリリングモーターおよびサービス 

E&Pサービス 

・サイドトラッキング技術の幅広い導入 

・石油・ガス上流サービス 

・坑井掘削作業 

・地震探鉱作業 

・水圧破砕工事 

・コイルドチュービングサービス 

ウクライナの防衛や治安分野(安全・セキュリティ) 

ウクライナのベストプロスペクトな産業分野です。ドローンなどの防衛系スタートアップも多く起業しています。ロシアの侵略に対抗するための人員配置により、国内の治安部門で大幅な人手不足が発生し、それを補うためにも効率的な治安維持の方法が求められています。 

ウクライナに多い強盗、自動車盗難による損害を防ぐために、私設警備員、警報システム、防犯カメラなどの需要は増えていますし、保険サービスへの加入も推奨されはじめました。 

市場・信用リスク調査会社であるFitchSolutionsは、ウクライナの犯罪に対する脆弱性を100点満点中34点とし、201カ国中149位としています。 

その一方で、ウクライナ政府は、汚職や犯罪と強く戦う方針を固めたため、ウクライナマーケットにおける安全・セキュリティ分野での有望株は以下の通りです。 

・警報システム 

・防火設備 

・爆発物検知器、麻薬検知器 

・映像解析機能を備えた高度なビデオ監視カメラ 

・パトロール警察用の身体装着型カメラ 

・無線機器 

ウクライナのインフラストラクチャー 

インフラストラクチャーは、ウクライナのベストプロスペクトな産業分野です。 

ウクライナのインフラ産業は、ロシアの侵攻によって劇的に弱体化しています。戦争が終わるまで、実質的なインフラ再建活動は行われそうにないですが、その準備は進んでいます。 

ウクライナの復興には、世界中の国家、企業、投資家、メディアが注目しています。ウクライナの復興には莫大な資金がかかると言われていますが、それを集めることに成功する可能性があります。ウクライナのEU加盟、NATO加盟やそれに準ずる安全保障の確立が、資金集めを促進します。 

ウクライナのインフラ産業の主なセグメントは、交通(輸送)インフラ、港湾(水路)インフラ、空港、道路、鉄道、郵便、海運サービス、住宅、非住宅建築です。 

ウクライナの観光分野 

ウクライナはロシアによる侵略戦争で大きな犠牲を払った反面、世界から注目される存在になりました。ウクライナの復興期、安全な空路が確保できたのちには、欧州をはじめとして各国からウクライナの首都キーウに観光客が訪れると予想されており、欧州で最もホットな観光地になると言われています。 

しかし、ウクライナ全土や、キーウには、大量の観光客が移動できるインフラ(空港からの電車や主要都市に向かう列車など)、タクシー、宿泊できる施設、レストラン、娯楽施設などなど、圧倒的に不足しています。 

ウクライナの不動産投資マーケット 

ウクライナ復興時には大幅な規制緩和など、戦後復興期の恩恵を受ける可能性があります。ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、土地改革や国有資産の民営化など、中長期的に成長を支えるべき意欲的な改革を掲げています。 

また、ウクライナは復興を機に、国家システムのデジタル化を推し進めようとしており、不動産マーケットにおいても例外ではありません。安全な投資環境が整備される可能性が増しています。 

ウクライナに、何を輸出する? 

ウクライナ経済発展貿易省によると、2020年に外国企業がウクライナに輸出した商品・サービスは600億ドル以上にのぼります。物品の輸出割合は90.5%、サービスは9.5%でした。 

・ウクライナに向け輸出されたTOP製品 

 機械工学製品 – 34.2 

 化学工業製品 – 19.8 

 鉱産物 – 15.9 

 製薬・食品工業製品 – 12.0 

 冶金複合体製品 – 5.8 

 軽工業製品 – 5.5 

 各種工業製品 – 4.4 

 木材・紙パルプ – 2.6 

・ウクライナに向け輸出した貿易相手TOP15 

 欧州連合 – 44.6 

 中国 – 14.2 

 ロシア-7.9 

 アメリカ – 6.3 

 ベラルーシ – 4.8 

 トルコ – 4.8 

 スイス – 1.8 

 日本 – 1.8 

 インド – 1.2 

 大韓民国 – 0.9 

 ベトナム – 0.8 

 カザフスタン – 0.7 

 アゼルバイジャン – 0.6 

 ノルウェー – 0.6 

 インドネシア – 0.5 

ウクライナから、何を輸入する? 

2020年の結果によると、外国企業はウクライナから594億ドルの製品を輸入しました。ウクライナからの商品の輸入比率は82.9%で、サービスは17.1%です。 

・ウクライナから輸入されたTOP製品 

 農業産業複合体や食品産業の生産物 – 45.1 

 冶金複合体の製品 – 18.4 

 機械工学製品 – 11.8 

 鉱産物 – 10.8 

 化学工業製品 – 5.5 

 木材・紙パルプ – 3.7 

 各種工業製品 – 3.4 

 軽工業製品 – 2.2 

・ウクライナから輸入した貿易相手TOP15

 欧州連合 – 37.8 

 中国 – 14.4 

 ロシア連邦 – 5.5 

 トルコ – 5.0% 

 インド – 4.0 

 エジプト – 3.3 

 ベラルーシ – 2.7 

 アメリカ – 2 

 インドネシア – 15 

 サウジアラビア – 1.5 

 イラク – 1.2 

 イスラエル – 1.1 

 アラブ首長国連邦 – 0.9%. 

 チュニジア – 08 

ウクライナマーケットの流通・販売チャネル概要 

※詳細を知りたい方は別途ご相談ください。 

・流通 

ロシアの侵攻により、ウクライナの流通・輸送能力は大きく損なわれ、Kyiv School of Economics(KSE)の試算によると、損害総額は313億ドル、輸送インフラの損失額は177億ドルに達しています。 

ウクライナの鉄道網は全長21,700kmで、ベラルーシ、ロシア、モルドバ、ルーマニア、ハンガリー、スロバキア、ポーランドに接続し、距離ではヨーロッパで3位にランクされています。道路インフラは、ウクライナの国内および国際輸送に不可欠であり、総延長は17万キロを超えています。水路インフラは、13のウクライナ海港と8つの川港で運搬しています。 

ウクライナの保税倉庫は、1)保税倉庫と2)一時保管保税倉庫の2種類があり、後者は、輸入者がウクライナで認証対象品、衛生・環境などの入国承認待ち、通関待ちの商品を一時的に保管するために利用することができるものです。他の国と同様、ウクライナも国境を通過する輸出入の流れを監視しています。 

・販売チャネル 

ウクライナ国家統計局の最新データによると、2020年のウクライナの小売業売上高は1兆2020億UAH(450億ドル)で、2019年と比較して10%の成長でした。小売市場全体の半分がチェーン店によって支配されています。ウクライナは大型ショッピングモールが人気の消費スポットです。外資系、国内問わず、豊富な販売チャネルが存在します。 

例えば、小売外資ですと、METRO GROUP(ドイツ)、Auchan(フランス)、Consul Trade House UAB(リトアニア)、Spar(オランダ)です。小売国内は、Fozzy Group、ATB Market、Retail Group、Furshetです。 

ウクライナマーケットで事務所設立 

ウクライナでの事業開始を希望する外国企業は、株式会社、LLC( Limited Liability Company )、100%出資の子会社、駐在員事務所のいずれかを設立することが可能です。また、ジョイントベンチャー、協力協定や投資ファンド、ミューチュアルファンドを通じてウクライナで活動することも可能です。 

規制や税制上、駐在員事務所は一部の例外を除き、独立した法人とみなされます。駐在員事務所は、マーケティング、プロモーション、その他の補助的な機能を果たすことができますが、商品やサービスを販売することはできません。 

商業サービスでは、製造やその他の重要な現地での商業活動を行う予定がある場合、ウクライナに100%出資の会社を設立することを推奨しています。外国の法人は、駐在員事務所と100%出資の子会社の両方を持つことができます。LLCは、幅広い事業活動を行うことができるため、ウクライナで最も人気のある法人形態です。 

ウクライナの eコマース 

ウクライナのEコマース市場は2020年に41%成長し、ウクライナのGDPの約2.6%に当たる40億ドルに達しています。ウクライナ人は、アパレル、電子機器、家電、家庭用・園芸用品、化粧品、食品をオンラインで購入することが多い傾向があります。 

ウクライナのEコマースのトッププレーヤーは、 

・OLX.ua 40% 

・Rozetka.com.ua 32.5% 

・Prom.ua 26.5% 

が挙げられ、ウクライナのEコマースの成長スピードは、ヨーロッパ諸国の中でトップクラスです。 

オムニチャネルアプローチは人気が高まっており、小売業者はオフラインの小売が低調でも、オンライン販売に力を注いでいます。2020年5月に行われたコリアーズ・リテールの調査結果によると、小売業者の49%以上が、近い将来にオンライン販売チャネルを開発する予定であると回答しています。 

ウクライナマーケットの価格規制、付加価値税(VAT) 

ウクライナの価格設定規制は「ウクライナの価格および価格設定に関する法律」に規定されています。また、付加価値税(VAT)、支払い方法、貿易金融オプション、銀行システム、外国為替管理など、金融面での規制は事業分野や会社形態、通貨、居住者非居住者などによって複雑に条件が定められていますので、詳しく知りたい方はご相談ください。 

ウクライナマーケットにおける知的財産の保護 

ウクライナで知的財産権を効果的に保護するためには、第一に、知的財産を保護するための全体的な戦略を法律家も含めて持つことが重要です。第二に、知的財産はウクライナでは日本と異なる方法で保護される場合があるということを念頭に置く必要があります。また第三に、ウクライナでは現地の法律に基づいて権利を登録し行使する必要があるため、例えば、日本や米国で登録した商標や特許は、ウクライナで権利を申請しなければ、ウクライナで行使することができないということになります。 

発明の特許は、経済省内にあるウクライナ知的財産研究所(Ukrpatent)に特許出願をすることで取得できます。ウクライナは「先願主義」であり、最初に特許を登録した個人または法人が権利者となります。 

ウクライナ官公庁への売り込み 

ウクライナの法律によると、物品、工事、サービスの調達は、物品の価格が10万UAH(約4,500ドル)以上、工事の価格が100万UAH(約45,000ドル)以上の場合、一般入札を実施しなければなりません。そして、ウクライナ政府は入札の告知とその結果を公表しなければならないルールがあります。 

また、外国企業による資金調達の場合は、公開国際入札を利用しなければなりません。政府調達は、EU連合協定や、WTO政府調達協定など、ウクライナが加盟している国際条約に規定されています。2016年から、ウクライナのすべての政府機関は、電子調達システムであるPROZORROポータルの使用を始めましたので、日本企業がウクライナ政府の入札に参加する機会が生まれています。 

ウクライナは現在、政府による直接入札に加え、主要なインフラ開発プロジェクトのために複数の多国間開発銀行から国際的な支援を受けています。これらのプロジェクトは、日本企業にとって機会を生み出すもので、入札公告は、世界銀行、欧州復興開発銀行(EBRD)、国際金融公社(IFC)、国連開発計画(UNDP)のウェブサイト上で行われています。 

ウクライナマーケットにおける投資環境 

ウクライナは、大規模な消費市場、高度な教育を受けたコスト競争力のある労働力、豊富な天然資源を提供しています。ウクライナ政府は、この潜在力を生かすための法整備を進めています。  例えば、2020年3月、ウクライナ国会は、2021年7月1日より農地売却のモラトリアムを解除する法律を可決しました。世界銀行は、これにより50億ドルの投資を呼び込むことができると予測しています。  

ウクライナは、知的財産権(IPR)に関する必要な法律の成立を続けており、これには、ウクライナの特許制度をEUの特許条約に近づける新しい特許法が含まれています。ウクライナはEUとの連合協定により、優先的な市場アクセスが与えられ、EUとの経済統合が加速しています。多くの欧米企業がウクライナで成功を収めており、特に農業、消費財、テクノロジー分野で成功を収めている現状です。 

ウクライナは農業大国であり、世界第2位の穀物輸出国です。それに加え、ウクライナは2000年代初頭から、ITサービスやソフトウェアの研究開発分野で熟練したエンジニアを輩出しています。ウクライナ政府は、STEM教育に重点を置いているためです。 

ウクライナ市場の潜在能力から考えますと、外国直接投資(FDI)は依然として低い水準にあります。その理由の1つに「司法における汚職」が挙げられます。外国投資を誘致するため、政府は2021年初頭に新法を採択し、ウクライナに大規模な投資を行う企業に対し、財政的・経営的にインセンティブを付与しています。ゼレンスキー政権に大きな期待が寄せられています。 

ウクライナ市場における投資環境は整っていないものの、成功を収めている世界企業は多く存在するという状態です。 

ウクライナマーケットで企業が直面する課題 

2023年5月現在、ロシアによるウクライナへの侵攻で、各企業は、ウクライナへの輸出や投資を一時的にストップしています。企業にとって短期的には数多くの不確定要素やリスクが存在するためです。オフショア開発、農業、防衛産業など、一部の分野においては、戦時下においても活発に投資や生産活動が行われている分野もあります。 

日本大使館や米国大使館をはじめ、各国の大使館は、ロシアの本格的な侵攻が始まった当初は業務を停止していましたが、2022年5月以降に徐々に部分的に業務を再開し、人員も大幅に増やしています。 

国際貿易局(米国商務省)によると、ウクライナは大きなメリットとは別に、ビジネスを始める上での障壁もあるようです。ここでは、ウクライナでビジネスを始める際に注意すべきマーカー要件やリスクについて書いていきます。 

ウクライナのビジネスは年率4~5%の大きな成長が見込まれており、多くのアナリストは、ウクライナが情報技術、貿易関連輸送、ウクライナでの農業ビジネス、航空宇宙・防衛産業などの大きな経済的潜在力を活用できれば、隣国のポーランドと同様の経済発展を示すことができるとしています。 

一方、ウクライナビジネスの成長を阻む制約として、ロシアによる占領、外国の介入、貿易封鎖、腐敗などがあることも、アナリストの間で一致しています。2019年、ウクライナ政府はウクライナの汚職に取り組むためのいくつかの第一歩を踏み出しましたが、時間がかかります。ウクライナでのビジネスにおけるその他の市場課題は以下のとおりです。 

・税務、税関職員との複雑なやりとり 

・税務、税関当局での作業に関する不透明な規則 

・ウクライナの企業に対する高い税率 

・ビジネス上の紛争を公平に解決できない、効率的でない司法制度 

・不透明で非効率的な規制環境 

・知的財産権の保護が不十分 

ウクライナマーケットの注意点(税関・規制・基準など) 

・戒厳令 

ロシアの侵攻を受け、通貨、税金、関税の規制に新しい法的規範が導入されています。そしてその規制の変更もありえます。特に商品の通関や税関当局の業務に影響を与えますので注意が必要です。ただ、悪いことばかりではなく、特定の商品の輸入関税および付加価値税の免除、商品の申告手続きの簡素化など、事業者や消費者にとって良いことも発生しています。 

・貿易障壁 

ウクライナ政府は、貿易を阻害する不必要な貿易障壁を分析し、企業にとってビジネス環境がシンプルで透明性の高いものになるよう取り組んでいますが、まだまだ先進国ほど確立されていません。輸入品に対する一貫性のない関税額、透明性のない認証要件、植物検疫証明のための煩雑な手続き、輸入ライセンス、文書作成など、面倒な貿易障壁が存在します。ウクライナの経済活動の商品分類は欧州連合の統合命名法に基づいており、ウクライナ政府は輸出入許可の対象となる製品のリストを毎年更新します。 

・商品ラベルと刻印の要件 

製品名称、内容、アレルギー成分、賞味期限、保管条件、使用条件、正規輸入代理店、原産国、苦情受付先、エチルアルコール含有量、食品の栄養価、遺伝子組換えなどなど、広告やラベル表示の制限のルールが多いですので専門家によるアドバイスが必要です。 

・輸入禁止や制限品 

ウクライナ政府は、武器、麻薬、化学物質、危険物質、特定の医薬品や通信製品の通過、輸入、輸出を厳しく管理・制限しています。 

・税関ルール 

ウクライナの関税法は、輸入と輸出を規制しています。 関税法は、輸入、輸出、再輸出、一時的な入国、通関のための商品の通過、関税、物品税、その他の関税の支払い、通関業者や保税倉庫の活動などに関する手続きの概要を示しています。ウクライナの法律によると、個人も法人も、ウクライナに輸入される商品の通関に関連して記録輸入者として活動することができます 

・貿易のための規格 

外国企業はウクライナの規格や規制システムの慣習を貿易や投資の大きな障害と見なしてきましたが、近年、WTO協定(TBT)と一致させることを目的としたいくつかの新しい法律や政令を可決しています。ウクライナは、製品の認証と認可のプロセスが長く、度々重複(たらい回し)にあい、費用もかかり、慣れていないと大変です。 

・貿易協定 

 2016年3月、ウクライナは政府調達に関するWTO協定に正式に加盟しました。これにより、ウクライナ企業は、EU諸国、日本、米国、韓国、台湾、シンガポール、香港、カナダなど、WTO政府調達協定(GPA)参加45カ国の公共調達に参加する権利を獲得しました。この協定により、ウクライナはWTOの政府調達ルールに従うことが義務づけられることになります。 

ウクライナ市場でのデジタルマーケティング 

ウクライナ市場への新規参入戦略を無事に成功させるためのもう1つのポイントとして、SMM(ソーシャルメディアマーケティング)は非常に重要視されています。ウクライナ人のソーシャルメディア利用率は高く、2022年10月現在で、ウクライナ人の約80.6%がソーシャルメディアをアクティブに利用しています。 

Viber、Telegram、YouTube、Facebook、Instagram、Twitter、TikTok、LinkedIn、GoogleMAPは、ウクライナでデジタルマーケティングを実施するときに欠かせないものです。 

ウクライナ人のインフルエンサーマーケティング 

IABウクライナ調査によると、ウクライナのインフルエンサーマーケティング市場は1,000万ドルを超える市場になっています。10年前、ブランドとブロガーのコラボレーションを真剣に考える企業や広告市場のプレイヤーはごく一部でしたが、今日、インフルエンサーはほとんどの大手広告主の常設コミュニケーション・ミックスの一部となり、市場評価では、ブロガーが他のメディアと予算をうまく取り合っていることが示されています。 

ウクライナでいうブロガーは、インスタグラマーやユーチューバーなども含みます。様々な事業分野で、インフルエンサーマーケティングとSMMを活用します。 

ウクライナのマスメディアや、カンファレンスを活用するマーケティング 

ウクライナの人気ラジオ局(Hit FM、Lux FMなど)、ウクライナの人気新聞(キエフ・ポストなど)、ウクライナの人気テレビチャンネル(チャンネル・ウクライナ、ICTVなど)、ウクライナで開催されるカンファレンスや展示会をマーケティングツールとして活用できます。 

いざ、ウクライナマーケットへの新規参入戦略! 

貴社がウクライナ市場への新規参入戦略を無事成功させるためには、各分野、要所要所で経験豊富な現地パートナーを持つことが重要です。 

ウクライナの文化では人間関係が非常に重要であるため、重要なビジネス案件は直接会って話し合うことが望ましいとされています。日本と似ています。 

「小さく始めて、関係を築き、市場を試す」このスピード感が重要となります。 

会社登録、製品認証、ライセンス取得、人材募集、通関手続き、デジタルマーケティングやプロモーションなどなど、ウクライナ市場特有の状態をしっかりと理解し、各方面に人脈があるパートナーを持つと良いでしょう。 

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